齋藤:「黄金の間」という予約制でのみ公開している部屋がありますが、エカテリーナ2世は、この部屋で黄金のティーカップでお茶を飲みながら、黄金の化粧道具で2時間ほどかけてお化粧をしていたんですって!
寺山:なんて優雅な時間でしょう!美しいものに囲まれていたことが、エカテリーナ2世の若さとパワーの秘訣だったのでしょう。エカテリーナ2世と言えば、沢山の愛人がいたという話が有名ですが、愛人達からも若さとパワーをもらうことが、アンチエイジングに繋がっていたのでしょうか。
齋藤:そうかもしれませんね。エカテリーナ2世はドイツ人で、片田舎の貴族の娘でした。16歳の時にピョートル3世に嫁いだのですが、夫が幼稚で無能だったため、エカテリーナ2世はクーデターを起こし、自ら大国の女帝の座に就いています。女帝になってからは、軍事、医療、文化、芸術に意欲的に力を注いだそうです。辣腕な女帝で評価は高かったのですが、一方で100人の男を侍らせていたなどの醜聞もあります。若い女性が大国を維持していくことは、恐らく大変なことだったと思います。寂しさもあったでしょうし、知恵も必要だったでしょう。これは私の私見ですが、彼女の愛人と呼ばれる人々は、それぞれ軍事、科学、外交などに精通している優秀な人物ばかりであり、彼女は恐らく彼らに知恵やネットワークを求め、側近として頼っていたのだと思います。
寺山:それは多く語られていない部分なので、ミステリーですね。
齋藤:これはあくまで私見であり、本当にどうだったのかは謎ですね。ただ、女性一人でできることには限度がありますし、優れた人物は側近として当然必要だったのでしょう。世界各国とどう友好関係を結んでいくか、領土をどう広げていくか……エカテリーナ2世は、それらを考え抜いて実践した女性なのだと思います。権力も財力も知力も、全て手に入れた女性ですが、もしかすると、だからこそ寂しかったのではないでしょうか。
寺山:どんなに高価な装飾品を身の回りにおいても、心は一人ぼっちだったのかもしれませんね。
齋藤:英雄ポチョムキンという恋人がいて、本当に好きだったのは彼だけだったのではないかという話もあります。ただ、大国のトップにいるという孤独感は強烈だと思いますし、誰にも相談できないことも沢山あったのでしょうね。「名画を鑑賞しているのは私とネズミたちだけ」という有名な言葉があるのですが、もしかしたら絵画と対話をすることで、自分の悩みや寂しさを癒していたのかもしれませんね。大国の女帝を支えて来た、絵画が持つパワーなのでしょう。 |