寺山編集長(以下寺山):リンリン先生は、今回の学会では日本代表のお立場で講演されていましたが、遺伝子治療という非常に興味深い内容を発表されていましたね。日本のアンチエイジングの状況なのか、それともリンリン先生のノウハウなのか...お話いただけますか?
賀来リンリン(以下リンリン):いろいろ織り交ぜて話しました。日本独特のものを主に発表しましたが、遺伝子治療に関してはヨーロッパで学んだことをベースに話しました。みなさんの反応がものすごかったですね。終わった後に名刺がドッと来て、発表に使ったスライドのコピーを全部欲しいと言われたり…。
寺山:こちらのドクターの反応って明快すぎて…。興味のある話のくいつき方がすごいし、興味が無ければそっぽを向いたり、出で行ってしまったり。
リンリン:本当にそうなんです。反応がわかりやすいですよね。
寺山:この学会に参加していろいろなアンチエイジングへのアプローチがあることに興味がわきました。日本だと今は美容皮膚科医や美容整形、美容形成の分野が中心で、内科から見るアンチエイジング的な考え方はまだ少数かなと思っていましたので。これが、これからのアンチエイジングの姿なのかと感じましたね。
リンリン:そう、美容皮膚科医や美容整形、美容形成のドクターたちも参加していますが、学会はこのようなジャンルの先生が内科にも興味を持つ機会でもあるんです。
寺山:なるほど。それにしてもパリでは医療内の美容分野でアンチエイジングが進んでいるように感じました。この傾向は、パリ独特のものなのでしょうか?
リンリン:そうですね。フランスのドクターの美容はとても進んでいます。コスメやエステの技術も世界トップクラスです。医療以外でのアンチエイジングのレベルが高く、医療的アンチエイジングはその上を行っていますし、進化のスピードも早い。3年前の話題の中心はボトックス治療などでしたが、今年は様々な技術によるフェイスリフトでした。豊胸もメスは使わず糸を使って、切らないでやるんです。プチ整形の領域に、これまでではありえなかったことが入り始めていますね。
寺山:日本だと、医療と美容が完全に分かれていて、両者の間に溝があります。私は以前、外資系化粧品会社にいたので、そういったジレンマはずっと感じていました。医療分野と美容分野が、いい意味で混ざり合わないんです。
リンリン:私の海外での師匠にあたるドクターは、ホルモンの専門家の先生です。彼は、体の内側がいい状態でない限り、外側がキレイになることはあり得ないという見解を持っているドクターです。つまり、外を美しくしたいならば、内が健康的でなければならない。今回の世界学会は彼が学会の首長となっているため、美容についても力が入るようです。
寺山:体の内だけでなく、外だけでもなく、どちらも一緒にケアしていくことが大切ということですね。そういったことを日常生活でも実感している人も多いと思います。寝不足で肌が荒れる、血行が悪いとクマができるのも「内と外がつながっている」という現れですし。食事だって大切です。化粧品だけでは根本的な美はなかなか生み出せない。やはり、その人が何を食べてどういう体を作っているかが鍵なんです。
リンリン:食事は本当に大切です。私たちは食べ物を口から入れて、代謝させて、血や肉や細胞にさせているんですから。
寺山:食べ物を選ぶときは、食品添加物や産地を気にします。できる範囲で農薬とかも避けています。口に入れるものの質に気を配るようになりました。この世代になり、これまでの仕事でいろんな美を見てきて今の価値観に行き着いている感じ。20代の頃はそんなことに興味なんて持たなかったですけどね。
リンリン:私は自然のものを良く食べます。土から生えた自然のもの。ミネラルが豊富でおいしい。お魚も食べます。お肉はそんなに食べないかな。でも結果的にカロリーが抑えられて、腸内環境にもいいんです。
寺山:よく、水を1日2リットル以上飲みましょうといいますが、美容的にはとても正解なんです。水分を使って代謝が行われるので、血行も整うし、代謝が促進されれば、皮膚だって新しい細胞を生みやすくなって、結果として肌の保水力がアップしたり、肌色が明るくなったり、メイクのノリも良くなります。水1日2リットルなんて、実は簡単なこと。習慣にしていないだけです。
リンリン:食と健康は密接につながっていますよ。
寺山::実は、美と健康と食もしっかりつながっていますよね。
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