「あるとき、ボランティアで学校に行って、研究や実験ってとても楽しいものだということを子供たちに伝えるために講演をしてきたんですよ。」とは、聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 先端医薬開発部門 DDS研究室の理学博士、山口 葉子さん。
ビューティのページで医科大学?!そして何やら少しばかり硬い肩書き、かもしれないが、研究者というお仕事って何だろうか。学校の理科授業で、蛙の解剖があった時代はとっくに過ぎ去り、今、研究者を目指したいという人は非常に少なくなっているらしい。
「実験の楽しさや、そこから湧き出る"どうして?"、さらなる好奇心が子ども達に芽生えなくなってきているように思うんですよ。だからね、自ら面白いと思う気持ちや、面白いものが見つけられない。そりゃあ、このあふれる情報時代ですから、はじめから選択肢がもうあって、与えられた選択肢の中から"面白そうだから、やってみようかな?"とか、"みんながやっているから取り残されないようにやっておこう"ぐらいの気持ちになってしまっているのかも。でもそれって寂しくないですか? あとはね、何故か"そうしなくちゃいけない"って思ってる。
私は研究者っていうのは、こんなに面白いものなんだよ、ということを胸を張って伝えたい。」
もう何だか泣けてくるような話ではないか。そうでなくとも涙腺がゆるくなりがちな昨今なのに。今や子供は大人の都合の中で生きていかねばならない時代。もしかしたら大人が子供の好奇心を奪い取っているのかもしれない。研究の世界への導きは、もはや遠いのか?!
「その講演はね、最初、死んだ魚の目みたいな状態だった子ども達が、だんだん本当に目をキラキラさせてきて、ものすごい変化が見られたんですよ。すっごく嬉しかったし、その後質問コーナーでのみんなの反応もものすごく良かった。特に女子の反応がすごかった。やって良かったと思った瞬間でした。質問もおもしろくて、実は全然稼げなくて貧乏ないんじゃないか、研究って何やってるかわからない、女性は研究者になれないのでは?などなど、純粋なわけです。知らないってことは悪いことじゃなくて、知らないから知りたい、知るともっと好奇心が沸いてきて面白くなる、もっと知りたくなるというスパイラルだと思うんですね。それをどこかで抑えてしまって、忘れかけていた。そんな子ども達の姿が見えた瞬間でもありました。」
沢山の希望や夢・将来という漠然としたものに対してどこか冷めているのが、現代っ子なのかも。だけど、ほんの少しのきっかけ、というのは誰にでもあるし、ありがたい時がある。傍にいる大人達が多くの引き出しを持ち寛大な心を持って、子ども達の肩をおしてあげられるなら、どんなにいいことだろう。
「私は、小さいときからちょっと変わった子だったんですね。母親似だったのかな。とにかく好奇心の塊、みたいな。それを懐温かく見守ってくれた環境に育ったので、今でも好奇心がすべてのベースになっていますし、これがないと私ではないかも。何でもまずは好奇心ありき、なのですよ。」
もともとは"白衣を着る仕事"に憧れて研究の道に入ったという山口先生。厳格な父を中心に規律正しい家庭環境の下で育ち、地元の静岡大学へ。そこではさまざまな職業経験をアルバイトという形で積んでいく。学生のわりには収入もかなりのもので、金銭的に困ることはなかったという。本来なら教職の道に進まなければならない宿命にあったらしいのだが、天性の楽天的な?ところと好奇心で見事に親をだまし(ごめんなさい)、大学院修士課程までを終え、民間会社に就職を決めるも、そこでより真偽を追求したい、ということでドイツ留学を決意する。
「でもビザがなかなかおりなかったんですね。で、いろんな人に助けられたりして。結局、ドイツには行けたんですけどね、まっ、プライベートなことも重なって。根っから前向きなのでバタバタながら、派手にドイツに旅立ちました。」
ここいら辺は、あまりにおもしろくて書き足りないのだが、先生のプライベートな部分でもあるので、省略します。(先生は書いても全然気にしないと思いますが。)
「言葉もわからず行ったドイツは4年半、人生で一番頑張った時期でした。ドイツに行かせてくれた会社では、一般的な社会人としての社会的マナーを仕込まれて。やれば何でもできるって思えるのは経験を積んだからだと思います。今の自分は"経験"が育ててくれましたね。」
"プラス思考"というのは、人生を前向きにするものだ。 |