旧暦10月を神無月と言いますが、出雲地方では「神有月」と言います。何故か? それは1年に1回、全国から八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まって、神様の会議「神議(かみはかり)」をするからです。ということは、御利益が更に高まるのかも? 神々に縁結びの直談判をすべく……もとい! 八百万の神々をお迎えする神聖な「神迎神事」「神迎祭」を取材すべく、モンナージュスタッフ中澤が出雲に行って来ました。
最初に向かったのは、出雲大社からバスで20分ほどの、日本海を間近に臨む日御碕神社。上の宮には素盞鳴尊(すさのおのみこと)、下の宮には天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀る神社です。時折トンビが鳴く以外ごくごく静かな境内には、えもいわれぬ清澄な空気が漂っておりました。そんなに広い神社ではありませんが、朱塗りの社が鮮やかで印象的。
参拝の後、バスで出雲大社へ。出雲大社は大國主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祀る神社です。ただいま「平成の大遷宮」、つまり修造の真っ最中。大國主大神が御本殿から御仮殿へと遷されており、御本殿を見られないのはちょっと残念でした。
まずは神楽殿にお参りを。殿内は270畳もの広さです。神楽殿には太さ9m、長さ13m、重さ4.5tの巨大なしめ縄がかけられており、間近で見ると圧倒されます。皆さんしめ縄に向かってコインを投げていますが、うまく縄に刺さると福が来るのだとか。
このあたりで、ちょっと休憩。出雲の名物といえば、蕎麦の実を殻付きのままひく「出雲そば」。神楽殿近くにあるそば屋「八雲本店」で、遅いお昼を頂きました。三段重ねのそばに薬味とつゆをかけて食べます。喉ごしのいいおそばも、衣サクサクの天麩羅も美味。
次に、御仮殿へ。こちらも神楽殿と同様、巨大なしめ縄がかけられています。隣の庁舎に行くと、拝殿で行われるこの日最後のご祈祷に間に合うというので、ご祈祷してもらうことに(もちろん「良縁」のご祈祷)。笛と太鼓の音が流れる中、古式ゆかしい装束の神主さんや巫女さんによる厳かなご祈祷が行われました。
あれれ、もしかしたら八百万の神々が到着した後の、翌日の朝にご祈祷をお願いした方が御利益あったかも? せっかく神在月に来たのに、何てドジなんでしょうと落ち込んでいたら「明日の朝、神様の前でもう一度お名前を読み上げますよ」とのこと。ホッ。
境内を散策しているうちに日も暮れて来たので、鳥居近くのカフェで出雲ぜんざいを頂き、体を温めてから1kmほど西にある「稲佐の浜」へ。ここは「神迎神事」が行われる浜で、大國主大神が天照大神に瑞穂国を譲ったという、『日本書紀』に出てくる「国譲り神話」の舞台です。
神迎神事は毎年旧暦10月10日に行われますが、2009年は11月26日がその日に当たります。神事が始まる19時よりも1時間以上早く着いたのに、浜辺の斎場には既にかなりの人垣が。
しめ縄が浜へ向かって張り巡らされ、御神火(篝火)が明々と燃え、神迎神事が厳かに始まりました。神事の最中はカメラ撮影禁止。静かな静かな神事です。祝詞があげられる中、海から八百万の神々が上陸して「ひもろぎ」と呼ばれる2本の榊に乗り移り、30分ほどで神事は終了。
この後、2つの提灯と御使神「龍蛇神」の先導のもと、「ひもろぎ」に乗り移った八百万の神々を神楽殿までご案内する行列が、30分ほど続きました。私は先回りして神楽殿で待機。行列が近づくと神楽殿の明かりが消され、静かな笛と太鼓の音が漂います。真っ暗な中、白い布垣に覆われた「ひもろぎ」の影がチラッと見えました。「龍蛇神」と「ひもろぎ」を神楽殿の神棚に安置し、「神迎祭」が開始。通勤ラッシュのようなあまりの混雑に、このあたりでそっと神楽殿を後にしました。
翌日は少し足を伸ばして、松江まで。松江駅近くの「島根県立美術館」からは、広々とした宍道湖が見渡せます。ここの庭にある12匹のうさぎの像は、ちょっと有名。前から2番目のうさぎを触ると、幸せが訪れるとか。宍道湖名物のしじみを備えると、御利益がアップするそうです。
時間が少し余ったので、松江城へ。5層6階の立派な天守閣でした。小泉八雲の旧居や記念館、武家屋敷が残る城下町など、松江にはまだまだ見どころがたくさん。今度は2泊くらいしてゆっくり散策しようと思いつつ、帰路に就きました。
観光客がたくさん集まるイベントのように捉えていましたが、「神迎神事」「神迎祭」は全国から神道の信者が集う神聖なお祭りでした。ちょっぴり浮かれ気味の自分を反省。
出雲大社が祀る大國主大神は「縁結びの神様」ですが、この「縁」とは男女の縁だけでなく「すべてのものが幸福であるように、お互いの発展のための繋がりが結ばれる」という意味とのこと。新たな縁を願うと同時に、今までに出会った人々との縁を神々に感謝する。出雲大社とは、そんな神社なのかもしれません。さて、御利益はいかに……?
出雲大社
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