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「薪能」で幽玄の世界を堪能してみる 「薪能」で幽玄の世界を堪能してみる
 今回モンナージュスタッフが鑑賞したのは、新宿御苑で毎年秋に開催されている「森の薪能」です。今年の演目は「能 安宅」「狂言 舟ふな」「能 殺生石」。「伝統の継承−親から子へ、祖父から孫へ」というサブタイトルの通り、「能 安宅」では観世清和(父)と観世三郎太(息子)が、「狂言 舟ふな」では野村萬(祖父)と野村虎之助(孫)が、それぞれ共演を果たして話題を呼びました。
 広々とした芝生に陣取って、穏やかな夜風に吹かれながら、薪に照らされた能を鑑賞できるなんて、素敵ではありませんか? 芸術の秋に、日本の伝統芸能の創り出す玄妙な世界観を堪能するのも、オツなものです。
 
今回は、能役者さんの著作権もありジャストな画像が撮れませんでした...。わかりにくいかもしれませんが、始まる前の能舞台。ここに薪が焚かれ、能が披露されます。
今回は、能役者さんの著作権もありジャストな画像が撮れませんでした...。わかりにくいかもしれませんが、始まる前の能舞台。ここに薪が焚かれ、能が披露されます。
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「薪能」って、何?

「薪能」って、ご存じですか? 夜に社寺などで、文字通り薪をたいて行われる野外能のことを言います。元々は、奈良興福寺の修二会(しゅにえ)の際に、夜ごと薪をたいて演じられた神事能のことを言うそうです。その神事能をまねて、戦後に野外で薪をたいた能が寺社で行われるようになり、今に至るそうです。
 「興味はあるんだけど、能って何だか堅苦しそうで……」なんていう方も、開放的な野外で上演される薪能なら、鑑賞しやすいのではないでしょうか? パンフレットを読んだり、解説を聞いたりして、前もってあらすじを覚えておけば、分かりやすいので大丈夫。何よりもやさしく頬をなでる夜風や、薪に照らされた能役者や狂言師の着物の美しさを、自分で体感することが大切。一度参加すると、その魅力のとりこになっちゃいます。
 今回、モンナージュスタッフが鑑賞したのは、毎年10月頃に新宿御苑で開催される「森の薪能」。今回で23回を数えるそうで、新宿の秋の風物詩となった大人気のイベントです。普段は入苑できない夜の新宿御苑も、この日だけは特別。係員の誘導に従って明かりの灯された苑内の小道を歩くことしばし、会場に到着。天井のない能舞台が野外に組まれ、広々とした芝生が客席となります。

 
新宿御苑の広い原っぱに、能舞台を中心としてものすごい人人人。各々、ゴザや膝掛けなどの防寒具を持参していました。ゆるやかに傾斜があるので「人の頭で見えなかった」ってことはなかったです。
新宿御苑の広い原っぱに、能舞台を中心としてものすごい人人人。各々、ゴザや膝掛けなどの防寒具を持参していました。ゆるやかに傾斜があるので「人の頭で見えなかった」ってことはなかったです。
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夜の闇に浮かび上がる能舞台

 4時半の開場とともに、人々は我先にと会場を目指します。会場の芝生に座っているのは、何千人、いや何万人? 見渡す限り、人、人、人! 大勢の人々が思い思いに芝生にレジャーシートや茣蓙を広げ、今か今かと開演を待っています。開場の頃は明るかった空も、太陽がゆっくりと傾いてやがて茜色になり、日没と入れ替わりに月と星々がその姿を現します。梢の上で輝く月は、とても綺麗。しばし月に見とれつつ、のんびりと開演を待つのもいいものです。
 6時の開演時間が迫り、人々の期待が頂点に達した頃、火入れで薪が灯されます。その美しさといったら! 薪の炎が夜空に煌々と映え、能舞台が夜の闇にぽっかりと浮かび上がる光景は、まさに幽玄の世界です。しばし現実を忘れて、うっとり。

受け継がれる伝統 今回注目されていたのは、「親と子、祖父と孫」の共演です。
 
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受け継がれる伝統
今回注目されていたのは、「親と子、祖父と孫」の共演です。

「能 安宅」は、兄の頼朝に追われる源義経と、主人を守り抜いた武蔵坊弁慶の話です。富樫が守る加賀の国・安宅の関で、強力(荷を負って従う下男)に扮した義経を富樫が怪しむと、山伏に扮した弁慶が機転を利かせて金剛杖で義経を散々打ち据え、気圧された富樫が関を通過させたという、あの有名なストーリーです。二十六世観世流宗家の観世清和さんが弁慶、その息子である観世三郎太くんが義経を演じました。観世清和さん演じる弁慶は凛々しく、また小学校2年生の三郎太くんが一生懸命演じる義経は、いじらしくも可愛らしく、満場の拍手喝采を浴びていました。

「狂言 舟ふな」は、意固地な主人と、ちょっぴり生意気な太郎冠者(召使い)とのやり取りに、何とも言えない可笑しさのある狂言です。西宮にお参りする主人が、川を渡ろうとして舟を呼ぶように太郎冠者に言うと、彼は「ホーイ、ふなやーい」と呼びかけます。主人は驚いて「ふなではない、ふねと呼べ」と言い、お互い古歌を引き出しては、舟は「ふね」か「ふな」かと言い争うという内容。祖父である野村萬さんと、利発そうな孫の野村虎之助さんの微笑ましいやり取りに、頬がゆるみます。人間国宝の野村萬さんの、味わいのある狂言が見事でした。

薪のもとで、伝統の至芸が次々と披露されます。夜の苑内に響き渡る笛や鼓の音、謡の朗々とした声は、ぞくっとするくらい雅なもの。野外では、虫の音や風の音も音響効果となり、花を添えます。伝統的な能や狂言の味わいと、野外ならではの開放感や季節感を、一度に楽しむことができる薪能……心のアンチエイジングにも、効果的かもしれませんね。ただし秋の夜は肌寒いので、防寒具をお忘れなく!

 Information
新宿区で行われる薪能は、毎年10月頃に行われています。
主催は新宿区観光協会。新宿御苑近隣の百貨店などでチケットが販売されます。
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