HABUさんの写真に写されているのは、いずれもありのままの、生き生きとした自然の表情。美しい空や風景と共に、浜辺を歩く鳥、楽しげに走り回る子供たちなどが写されています。どのようにしたら、そんな新鮮な写真が撮れるのでしょうか。
HABU:今、『海は空を映す』という写真集の発売を記念して、写真展をやっているんです。ずっと空や雲がテーマで来たので、たまには違うテーマで海の写真集を作ろうということになり、「海は空を映す」をテーマに、過去20年分の写真の中から今の気分で写真を選んでみました。
そうすると、自分が無意識のうちにこだわっている写真のポイントが見えて来たんです。普通、写真の学校では「風景は三脚を立てて撮らなければいけない」「絞りはいくつまで絞らなければいけない」などの、色んな「してはいけないこと」を教えるんですよ。でも僕の写真は「してはいけないこと」ばっかり(笑)。水平線が斜めだったり、ブレていたり……でも、それで逆に臨場感や、瞬間の面白さが出たりするんです。
そう言ってHABUさんが見せて下さった写真には、水滴がレンズについていたり、ピントが合っていなかったり、構図が斜めになっていたりするものも確かにありました。でも、どれも味わいがあって、生き生きしているものばかり。写真から、その場の音や風、匂いまでもが伝わって来そうです。
ブレていても、ピントが合っていなくても、HABUさんにシャッターを押させてしまうもの……それは一体、何なのでしょうか。
HABU:僕は「あっ!」と思った瞬間に撮るの。構図を考えて、三脚をいじって撮るんじゃなくてね、ほとんど「手持ち」なんです。三脚を立てていたら、鳥が砂浜を歩いている写真なんて撮れないんですよ。
風景写真は「瞬間を撮ること」なんですけど、頭の中で構図を考えてからシャッターを押すと、意外性って絶対なくなるんです。誰が撮っても同じ写真になってしまう。最近、自分の写真を見ていて気が付いたのは、「やっぱり瞬間を追いかけているんだな」っていうことです。波一つを取っても、一番いい形の波を探してその瞬間を撮りますし。雲も自然まかせですから、納得のいく雲に出会うことって、本当に稀なんですよ。雲は瞬間が勝負で、「あっ!」と思った時にシャッターを押せるか押せないかが命。ありとあらゆる時間に空を見上げて、チャンスが来た時にフィルムが入ったカメラを持っているように、空に向けてアンテナを張っています。
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