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星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

10月になり、いよいよ秋本番。スポーツに食欲に芸術に遊びに(?)と、何かと忙しいシーズンですよね。でも、ともすると浮き足立って、気持ちに余裕を失ってしまいがち。そんな時は日常から少し離れて、心静かに夜空を眺め、心身をクールダウンしてみるのもいいものです。自宅のベランダや会社の屋上、時には少し遠出して空気の綺麗な場所で、星のささやきかけるメッセージに耳を傾けて……。ね、心が落ち着きそうでしょ。
「でも、星の名前が分からなくて」「星の位置が分かったら、もっと星空を楽しめるのに」という方のために、今回モンナージュスタッフが取材をお願いしたのは、星空案内人「星のソムリエ」。ソムリエが美味しいワインを選んでくれるように「旬な星空」の楽しみ方を教えてくれる、頼もしい星のエキスパートなのです。

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
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星のソムリエって、どんな資格?

今回モンナージュスタッフが取材をさせて頂いたのは「星のソムリエ」泉水朋寛さん。普段は「株式会社アストロアーツ」という会社で、星空専門ソフトの開発や、雑誌「星ナビ」の編集をしていらっしゃいます。

泉水さんが星に興味を持つようになったのは、小学生の頃。キャンプや岡山にある父方の実家に行った時に満天の星を見たことと、お母様が何気なく買ってくださった星の本に夢中になってしまったことが、星の世界への入り口になったとか。以後、学生時代は天文同好会に所属し、大学では理学部の天文学を専攻。大学院を修了後に現在の会社に就職し、星のソムリエとしても活動するという、まさに「星一筋」の道をまい進中。

泉水さんは2003年からスタートした資格制度「星のソムリエ」の、東京都三鷹開催地での記念すべき第1期生。そもそも「星のソムリエ」って、どんな資格でしょう?

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
  • まず、10講座程度の認定講座を受講します。所定の単位を取ると「準案内人」になることができます。そこから更に実技試験に合格すると「星空案内人」、つまり「星のソムリエ」の資格を得られます。実技は望遠鏡の使い方や星の見つけ方に加え、実際にお客様にお話ししたり、望遠鏡を操作して天体をお見せしたりすることも含めます。星に関する予備知識がなくても「準案内人」にはなれますが、「星空案内人」になるには、実技テストがある分、ハードルが上がります。
     講座の開催地は全国に16箇所あり、東京では国立天文台がある三鷹で開催されています。三鷹の国立天文台では「天文台歴史館」を含む見学コースが毎日一般公開されているんですよ。観望会も毎月2回あります。

三鷹に国立天文台があることも、一般公開していることも知りませんでした……。今度見学に行ってみようかな。
それにしても、なぜ「星のソムリエ」の資格を取ろうと思われたのでしょうか?

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
  • 2003年に山形大学で資格制度が始まった時に、すごく面白そうなので取得したいと思いました。学問としても研究を重ね、趣味としても好きなので、星に関することは何でもやりたかった。何かに活かそうというより、面白そうだから取得したという感じです。

星のソムリエとして、現在はどんな活動をされているのでしょうか?

  • 「星のソムリエ」の講座を開講している三鷹ネットワーク大学で「星空散歩」という企画があるので、そこでお話をしています。また、三鷹にある小学校の「アストロクラブ」を月1回お手伝いして、観望会でお話をすることも。星のソムリエの中には、地域の観望会や、客船、山頂、スキー場での星空案内に参加される方もいらっしゃいますよ。

学芸員だと少々気後れしてしまいそうですが「星のソムリエ」という資格があると、星について気軽に質問ができて嬉しいもの。星のソムリエは、星空と一般の人々との架け橋になる存在なのかもしれません。

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

10月27日の午後8時の月と木星。月を探して、その周辺にひときわ明るく見える星が木星です。

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星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

これは10月12日午後8時の星空。西に「夏の大三角」、真南に近い南南西に「木星」、真南に一等星「フォーマルハウト」があります。真夜中になると「オリオン座」が昇って来るそう。

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星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

11月12日の空の様子です。

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星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

星座を線でつなぐとこんなふう。

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星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

星座にイラストをのせてみると、こんなふう。

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秋の星空はロマンティック
〜ギリシャ神話に想いを馳せる〜

では早速、秋にはどんな星が見られるのか、お得意の「星空案内」をして頂こうと思ったのですが……?

  • 実は秋って明るい星が少ないので、一年で一番説明しにくい季節なんですよ(笑)。夏は「天の川」と「夏の大三角」、冬は「オリオン座」を中心とした明るい星があるんですけどね。
    今年の秋に限って言えば、午後8時ごろに南南西の空に木星があります。これは本当に明るいですので、まずは木星を見つけてみて下さい。
  • 一番明るく輝いている木星なら、初心者でも見つけられそう。でも、その後どうやって他の星を見つけたらいいの?
    そこで泉水さんが見せてくださったのが「ステラナビゲータ」。泉水さんの会社で開発・販売している、天文シミュレーションソフトです。ソフトを起動すれば、パソコンの画面に秋の星空が。
  • 他の見つけやすい星としては、 10月中旬頃までは「夏の大三角」がまだ見えていますから、これを見つけていくのが楽しみの一つ。都会でも見えますよ。
    「夏の大三角」はベガ、デネブ、アルタイルという3つの一等星からできているので見つけやすいですが、秋の星のうち一等星で明るい星は「フォーマルハウト」だけです。
    10月中旬午後8時頃の星の見つけ方としては、天頂からやや西の部分に「夏の大三角」を見つけ、南から南南西の空に見えるとても明るい星「木星」、そして南の空に「フォーマルハウト」を見つけましょう。頭の真上にある「秋の四辺形」は二等星と三等星でできているので、知っている人が見れば都会の空でも分かるかもしれませんが、空気の綺麗な場所に行かないと厳しいかもしれません。
  • 都会で見える秋の星座は、残念ながら大分限られてしまうみたい。空気の綺麗な場所に行ったら、どんな秋の星を見つけられますか?
  • 秋は暗い星座が多いですが、神話で有名な星座がたくさんあります。「アンドロメダ座」「カシオペヤ座」「ペルセウス座」「ケフェウス座」「くじら座」「ぺガスス座」は、みんなギリシャ神話に登場する星座。星のよく見える場所に行ってこれらの星座を見つけられたら、ストーリーを思い描いて楽しむことができます。
  •  ……エチオピアのケフェウス王の妃カシオペヤは、娘である王女アンドロメダが、海の精ネイレスたちより美しいと自慢したため、海神の神罰が下り、愛娘を海獣(お化けくじら)への生け贄に捧げざるをえなくなりました。アンドロメダが岸壁に鎖で繋がれているところに、メデューサ退治から帰る途中の英雄ペルセウスが、ペガススに乗って通りかかります。ペルセウスは現れた海獣にメデューサの首を突き出して石に変え、アンドロメダを救って妻に迎える、というストーリー。なかなかロマンティックです。
    星自体はちょっと控えめですが、星座のストーリー自体は印象的な秋。秋の夜空を眺めながら、ギリシャ神話の本を紐解いてみるのもオツな楽しみ方です。
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もっと気軽に星を楽しもう

  • 秋の星座について教えていただきましたが、いざ星を見ようとすると、望遠鏡や星座早見盤を買わなければいけないのかな? なんて、つい肩に力が入ってしまうモンナージュスタッフ。
    泉水さんご自身は、普段どのように星を楽しまれているのでしょうか。
  • 僕は自転車で通勤しているので、仕事帰りに空を見上げて、月や木星などの星の位置を確認します。そうすることで、「ああ、もうこんな星座が見えるようになって来たなぁ」と、季節の移り変わりを楽しんでいます。
    僕の家は大通りに面しているためとても明るいのですが、街灯に背中を向ければ結構星は見えるもので、夜中にゴミを出しに行ったついでに、双眼鏡も一緒に持って出て、星を眺めることもあります。
    それと、三日月を見るためだけに、会社の屋上に上がるのも好き。普段から意識していないと三日月の日は分かりませんが、逆にそれを意識するように心がけるのもいいのでは。
  • こんなふうに毎日の動きの中に気軽に天体観察を楽しめたらいいかも。特に道具がなくたって楽しめる星空ですが、双眼鏡一つあれば、月のクレーターが見られたり、楽しみ方が全然違って来るそうです。
    実際、双眼鏡で三日月を見ると、暗い部分も月の形がうっすら見えて、ちょっと感動的。数千円の組立式望遠鏡でも月のクレーターや金星の満ち欠け、木星のガリレオ衛星が見られるそうですので、まずは安価なものから買い求めてみるといいかもしれません。
星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方

DSを動かすと画面の星空も動いて、DSを向けた位置の星座が画面内に見える! これは本当に感動モノです。しばらく、夢中でDSをあちこち向けては「あっ、アルデバランだ」「カシオペヤ座発見!」と騒いでいました。これなら初心者でも星を見つけやすくて楽しいこと請け合い。ちなみに、iPhoneにも「iステラ」という同様のソフトがあるそうです。

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星たちをぐっと身近に感じられる 
〜ニンテンドーDSソフト「星空ナビ」〜

地上から見ていると、なんとなく夜空が平らな二次元に見えてしまうことってありませんか? 地面の上で日々仕事やいろんな問題と向き合っているうちに、宇宙を三次元で捉えるイマジネーションがなくなってきちゃったみたい。
「じゃあ、宇宙が三次元だという想像ができるように……」と、泉水さんが取り出したのは、ご存知「ニンテンドーDS」。泉水さんが開発に携わったソフト「星空ナビ」をセットすると……。

このソフトはDSを夜空に掲げて星を確認するためのもの。ですが、昼間室内にいる状態で使っても星の位置が分かって面白い! それにこのソフトでは、地面にDSを向けると日本からは見えない南半球の星も見えるんです。さらに、昼間は地球の反対側を運行している月まで見えるではありませんか! 地面の向こうにも無限の宇宙が広がっていることは、当然と言えば全く当然なのですが、日頃自分の「下」にある宇宙を想像したことがなかったので、かなり新鮮な驚きでした。いつのまにか、自分のいる場所主体の「天動説」主義者になっていた自分を発見して、ガクゼンとすることしきり。
金子みすずの詩に「昼のお星は目に見えぬ 見えぬけれどもあるんだよ」というくだりがありましたが、まさにそんな感じ。普段見えない星や昼間の月も、確かに存在することを実感しました。

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12月のふたご座流星群

今年は、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で天体観測をしてから400年目。「世界天文年」としてそれを祝し、世界各地でさまざまな天文イベントが行われています。今年は国内で46年振りに皆既日食が見られたこともあり、人々の関心が今まで以上に天文に向いている年なのかも。そんな今だからこそ、もっと気軽に天体観察にチャレンジしたいもの。
そういえば今年は、8月12日の夜から13日未明に出現した「ペルセウス座流星群」も注目を集めましたよね。

  • 「ペルセウス座流星群」は、スイフト・タットル彗星の塵によるもの。スイフト・タットル彗星は、約130年周期で太陽の周りを回る間に、軌道に塵を撒いていきます。スイフト・タットル彗星と地球の軌道が重なった時に、流星群が見られるのです。ペルセウス座のあるあたりを放射点(中心点)として流星が飛んで来るため「ペルセウス座流星群」と呼ばれています。

 ……地球に彗星の塵が飛び込んで来るのだとばかり思っていたモンナージュスタッフ。流星群とは、彗星が以前に残していった塵の中を、地球が通過して起きる現象だったのですね……。またもや「天動説」的で自己中心的な発想だったみたい。
流星群はテレビなどでも報道される、大きな天文イベントの一つですが、泉水さんが今まで見た中で、一番印象的な流星群は何でしょう?

  • 2001年の「しし座流星群」です。三重県の海岸で見ましたが、本当にすごかった。流星群とは、砂粒くらいの彗星の塵が地球の軌道と重なり、地球の大気圏に飛び込んで熱で大気が光る現象。火球のように大きく見えるものでも、実際はごくごく小さな数センチ程度の石です。

流星群は、1年に1回くらい見られるものでしょうか。

  • もっと多いですよ。ある日に集中して流星が見えるだけで「流星群」と呼ばれるので、流星群の数自体は多いのですが、マスコミで取り上げられる大きくて明るいものは、限られてしまうということです。

8月のペルセウス座流星群を見逃した方に朗報! 嬉しいことに12月にも流星群が見られるとか。

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
  • 12月14日ごろに見られる予定の「ふたご座流星群」は、比較的大きな流星群です。1分に1個流星が見られれば上出来という規模ですが、天文のイベントとしては大きいもの。ただ一般の方には見つけにくいかも?

流星群というと、流星が花火のように次々と出現するのを想像してしまいがちですが……一般人のイメージと実際の流星群との間には、ギャップがあるのかも。ただ、ゆったりとした気持ちで星が流れるのを待つのも楽しいはず。そんな心のゆとりが欲しいものです。

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2012年の金環日食

今年は、46年振りに国内で見られた皆既日食が大きな注目を浴びました。国内で見られる次の大きな天体イベントは、2012年の金環日食。金環日食は、太陽よりも月が小さく見えるため、皆既日食のように完全には重ならず、指輪のように見えるそうです。金環日食が綺麗に見える「金環帯」が日本の太平洋側に寄り添うような形でかかっていますが、東京でも結構見えるのでしょうか。

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
  • 結構どころか、東京は金環日食のビューポイントの、ど真ん中に位置しています! これを見逃してはいけませんよ。

と、ここで泉水さんが取り出したのが「エクリプスナビゲータ」。パソコンで日食を再現できるソフトです。2012年5月21日のAM6:15くらいから太陽が欠け始め、金環日食が最大になるのは東京がAM7:35、横浜がAM7:34の予定。太陽はかなり欠けていても普通に明るく、肉眼では直視できないそうですので、観察には日食グラスを忘れずに。太陽のリングの形をした木漏れ日が地面に落ちる「木漏れ日効果」も、晴れていれば楽しめそう。

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読者へのメッセージ 〜星の世界への入り口〜

近年、都市部の夜は明るさを増し続け、山間部でも街灯の光などで、星はどんどん見えなくなっています。星が見えにくくなったことで、その先に広大な宇宙が広がっていることを、我々は忘れかけているのかもしれません。
でも、都市部でも見える星もあります。帰宅途中に、飲み会の帰りに……日常生活の中でちょっと意識して、立ち止まって星空を見上げてみる。それが星の世界への入り口になるのかもしれません。

星のソムリエに教わる、星空の気軽な楽しみ方
  • 星は構えて見るものではありません。深く知れば知るほど面白いものですが、入り口はすぐそこにある。月なら模様も見えるし、木星だって肉眼で見えます。ただ見上げるだけでも楽しいし、疲れた時にふと空を見上げて「綺麗だな」って思うだけでも十分。そこから先に進むかどうかは、その方次第。先に進みたい時は、星空ソフトを使ったり、Webで情報を調べたり、星のソムリエに話を聞いたりと、色々な方法で星について知って頂けると嬉しいです。僕も星のソムリエとして、いろいろお手伝いできると思いますよ。

目前の悩み事に振り回されている時、気付かないうちに「自分が一番大変」だと感じる「天動説」主義者になっているのかも。そんな時は星空を見上げて、自分が太陽系の中の地球にいること、無限の宇宙に取り囲まれていることを体感してみる。宇宙の中で自分はちっぽけな存在に過ぎないと思えたら、抱えている悩み事も俯瞰して、小さなものとして捉えられるのかも知れませんね。
※「星空案内人」「星のソムリエ」は山形大学の登録商標です。

 取材にご協力頂きました

星空案内人「星のソムリエ」:泉水朋寛さん
【泉水さんが参加されるイベントスケジュール】
●2009年10月毎週土曜 六本木ヒルズ屋上観望会 / 主催:六本木天文クラブ
http://www.roppongihills.com/tcv/jp/tenmon.html
●2009年10月24日(土)三鷹・星と宇宙の日(国立天文台の特別公開)
http://www.nao.ac.jp/open-day/
●2009年11月7日(土)〜8日(日)「星空案内人と行く秋の星空ツアー」in長野県川上郷自然の村 / 主催:三鷹ネットワーク大学 https://www.kouza.mitaka-univ.org/kouza/C0912100.php

株式会社アストロアーツ
HP:http://www.astroarts.co.jp/
※記事中に掲載した星図はアストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ Ver.8」にて、日食の様子は日食シミュレーションソフト「エクリプスナビゲータ Ver.2」にて作成したものをお借りして掲載しています。

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