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以前、Vol.33のカルチャーでご紹介した、TaoZen(タオゼン)代表の大内雅弘先生の新しいスタジオが、2010年1月20日に表参道にオープンしました。早速、できたてピカピカのスタジオにお邪魔したモンナージュスタッフ。話題の「チネイザン」というメソッドについてお伺いし、実際に大内先生にチネイザンを施術していただきました。「氣内蔵」という意味のチネイザン、果たしてどんなメソッドなのでしょう? |
閑静なエリアにある新しいスタジオ
目印はスマイルマークの看板です
地下鉄の表参道駅から歩くこと数分、オレンジ色に白抜きスマイルマークの看板が見えてきたら、そこはTaoZen表参道スタジオです。ビルの3階にあるスタジオは、大きな窓から光が降り注ぎ、明るくてとても開放的。青山通りから少し入っただけなのに、とても静かなエリアで、瞑想やヒーリングには最適の環境です。
大内先生は、これまでニューヨークに在住し、ニューヨークとヨーロッパ、東京を行き来して世界中でメソッドを広めてきました。セレブの利用者が多いタイの高級スパ「チバソム・インターナショナル・ヘルスリゾート」でも、「チネイザン」は大人気プログラムなのだとか。
そんな大内先生、これからは表参道スタジオをベースにして、アジアや欧米でワークショップを続ける予定だそうです。まずは思い入れのある表参道スタジオのコンセプトからお伺いしていきましょう。
白いスタジオ、オレンジの廊下、チョコレート色のヒーリングルーム。カラフルで、海外の幼稚園っぽいかも!
- 大内先生:表参道スタジオのコンセプトは「大人の幼稚園」なんですよ。瞑想って、一歩間違えると宗教的になってしまいますから、そういうイメージを払拭するために「幼稚園」にしました。スタジオの壁は白にして、廊下の壁はオレンジ色、ヒーリングルームは茶色で統一しました。ヒーリングルームは通称「チョコレートルーム」なんですよ。
「TaoZen」とは何か、再度大内先生にお伺いしてみましょう。
- TaoZenとは、「Life Practice」……生きるためのプラクティス(練習)です。TaoZenは、「瞑想」「呼吸法」「気エクササイズ」「Healing(ヒーリング)」「Life Empowerment」という5つの項目に分かれています。図解すると、このようになります。
この図は初めて拝見します。TaoZenを視覚的に整理できて概要が分かりやすいです。
- 1つずつご説明しましょう。
・「瞑想」には色々な瞑想法があり、チネイザンも瞑想法の一つです。
・「呼吸法」が大切なのは、生命を維持するために最低限必要な活動が「呼吸」だから。呼吸は、止める・ゆっくり吐くなど、自分でコントロールできる幅が広いですね。
・「気エクササイズ」とは、太極拳や気功など。体と心と魂に同時にいいと思われるものを、僕は「エクササイズ」と呼んでいます。
・「Healing(ヒーリング)」は自分を癒やすこと、そこから広がって他人も癒やすこと。「自分一人だけがいい気分」っていうのは、実はそんなに幸せではないんですよ。
・「Life Empowerment」は実際の生活に役に立つこと。例えば、僕は太極拳をお教えしていますが、受講者の方が太極拳が上手になるかどうかは、実はどうでもいい。何も、太極拳の世界チャンピオンを生み出そうと思って、お教えしているわけではありません。自分と自分との関係、自分と家族との関係、自分と仕事との関係、自分と社会との関係において、何らかの変化がないと、太極拳をやっても意味がないと思います。
チネイザン1つとっても、この5つの要素がないと成り立たないそうです。
- チネイザンは瞑想に入りますが、呼吸法が入っていないと、どうにもならない(瞑想・呼吸法)。また、チネイザンは体と心と魂に良くないと意味がない(気エクササイズ)。自分のヒーリングであり、相手のヒーリングでないと、チネイザンにならない(Healing)。チネイザンをやることによって自分の生き方が変わらないと価値がない(Life Empowerment)。このように、5つの要素はお互いにリンクしています。
それぞれの要素に関するメソッドは数限りなくありますが、順番にやればいいというものでもない。ある意味、どこから始めてもいいのです。瞑想は簡単なものから初めて、だんだん複雑になるんですが、複雑になればレベルが上がっているかというと、そんなことはない。ただ複雑になっただけなんです。
最初はメソッドの型から始めても、徐々に他のものにも興味が出てくるのではないでしょうか。
- そうですね。実際、チネイザンをやりたくて受講された方が、「太極拳や瞑想もやらないとチネイザンがうまくならない」ということが分かって、チネイザンと一緒に太極拳や瞑想もやっていらっしゃいます。また、チネイザンに興味があって受講したはずなのに、「自分は瞑想がしたかったんだ」と発見した方もいらっしゃいます。
まずは、何か1つのメソッドを始めてみる。そしてそれを続けていくうちに、自分に合うメソッドや、やりたかったメソッドを発見していく。表参道スタジオは、そういう場所なのかもしれませんね。
タオゼンについて語る大内先生
ではいよいよ、話題の「チネイザン」についてお伺いしていきましょう。
- チネイザンとは、漢字では「氣内臓」と書きます。中国三教の一つ「道教」の中心概念である「タオ(道)」に伝わる気功療法の一つです。お腹をやさしくなでて内臓に気を巡らせ、感情のバランスを整えて、体全体の生命力を高めることを目標にしています。
マッサージのようにも見えますが、チネイザンはマッサージではなく、ごく軽くタッチするだけなんだそうです。
- 日本人は強いマッサージが好き。「手で聞く」ということが、あまりないのです。
チネイザンは、母親が泣いている子供に触れるのと、全く同じ。泣いている子供は、なぜ泣いているのか説明できませんよね。頭が痛いのか、それともお腹が痛いのか? 母親はなぜ子供が泣いているのか分からないけど、一生懸命触ろうとする。それが内臓まで浸透するのが、チネイザンということです。
チネイザンをしている最中に、大内先生はどんなことを感じ取っているのですか?
- 人間は、肉体だけでは成り立ちません。人間には必ず感情があり、その感情は肉体との関係なくしてはありえない。自分の肉体は今ここにいるのに、感情がニューヨークで悲しんでいる、ということはないわけです。考えることに関しても、肉体という器との関連なくしては考えられない。魂も、肉体という器の中でしか存在しない。魂の存在を信じる・信じないの差はあるにしても、「魂のない人、手を挙げて」と言われて、手を挙げる人は誰もいませんよね(笑)。
ですから「触る」ということは、肉体だけに触っているわけではなく、触る方も触られる方も、感情や情報、魂に一緒に触れているのです。僕が相手の方を触るということは、その瞬間、僕が相手の方に触られているということでもある。一方的に触るということはありえないんです。
チネイザンをしてもらっていると、嬉しくなる人、泣き出す人もいるのだとか。大内先生は、肉体だけではなく感情や魂にも触れていらっしゃるんですね。
興味シンシンでお話を聞く寺山編集長
人間には感情がある。それと同じように、内臓にも感情があると、大内先生はおっしゃいます。ええっ、内臓にも感情があるの?
- 「胃は消化する臓器だ」というふうに、日ごろ考えていらっしゃるかもしれませんが、実は胃にも同じように感情や情報、魂がある。そう考えても、それほどおかしくはないはずです。
これは「陰陽五行説」から来ている考え方だそうです。
「陰陽五行論」は、古代中国の「陰陽思想」と「五行思想」が融合したものだとか。「陰陽思想」とは、「男と女」「昼と夜」「プラスとマイナス」のように、全ての存在には「陰」と「陽」という対立する関係があるという考え方。「五行思想」は、万物は「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素から成り立つという考え方です。それに臓器を当てはめると「五臓」となり、それぞれの臓器に対応する「陰の感情」や「陽の感情」もあると考えられています。
「五行思想」を簡単に表にすると、下記のようになります。
例えば、ずっと「悲しい」感情を抱いていると、肺がダメージを受けることがあるのでしょうか?
- ありますね。中でも、「怒り」の感情はとても分かりやすい。怒りっぽい人は肝臓を悪くする可能性が高いです。怒ると止らなくなる人、逆に怒られるとすぐ凹んでしまう人、どちらも怒りと自分とのバランスが悪く、肝臓が弱い可能性があります。全然怒らない人も時々いらっしゃいますが、実は怒りに鈍感になっているだけ。なので、肝臓を悪くする可能性があります。怒っても、怒りを抑えても、それは怒りの「陰と陽」ですから、共に肝臓に悪いわけです。肝臓の具合が悪いから怒りやすいのか、怒るから肝臓の具合が悪くなるのか、どちらが先か分かりませんけどね。
卵が先か、ニワトリが先か、という感じでしょうか(笑)。
普段から内臓の具合を把握できると、自分が溜めやすい感情も知ることができそうですね。ただ、私たちは痛くならない限り、なかなか内臓の存在を意識しないものです。
- そうですね。ただ、人体の大切な器官の中には、痛みがないものもあるんですよ。例えば、脳には神経がないから、脳それ自体が切られても痛みは感じない。肝臓も同じです。
人間は自分が感じていることが全てだと思ってしまうけど、実は感じていないことの方が明らかに多い。人間の体の90%くらいは、自分で感じることができませんよ。肝臓や胃の動きなんて想像もつかないわけでしょう? 「昨夜食べたものはどのあたりにあるか」「今リンパ液はどのくらい流れているか」なんていちいち考えていたら、気持ち悪くて生きていけません(笑)。感じられない鈍感な90%があるから、僕らは生きていける。人間は非常に鈍感に、大らかにできているんです。
感情だってそうなんですよね。感じている感情なんてほんの少しで、意識していない感情の方が多いかもしれない。僕はチネイザンをする時に「できるだけ感じよう」としていますが、あまり考えすぎずにやることが大切です。
チネイザンでお腹を触ることで、「自分の体なのに、知らないところが一杯ある」って気付くことがすごいんですね。
- 僕もそう思います。チネイザンをやってみて、今の一番の発見はそれですね。人間は自分を非常にセンシティブだと思っているけど、それはセンシティブなところだけを見ているからであって、実はみんな、自分勝手に鈍感なんですよ(笑)。
だからといって、体の声を無視しすぎてもいけないと、大内先生はおっしゃいます。
- 小さな子供だって、何を言っているのか分かりませんが、聞いてあげていると気持ちが治まってくるでしょう。時には内臓の声なき声も聞いてあげた方がいいのです。
あまり考えすぎずに、やさしくお腹を触って内臓と対話してみる。そんな時間を持つことが、私たちには必要みたいです。
お話をお伺いしていく中で、大内先生が強調すること。それは、チネイザンなどのヒーリングを通して「自分も他人も癒やすことの大切さ」です。
- 人間は1人では生きていけません。シマウマは何百頭で群れを作りますが、1頭だけはぐれると食べられて死んでしまう。人間もそういうところがあって、1人だけ置いて行かれることが一番恐ろしい。そうならないためには、何でもするんです。「1人になりたい」のと「1人にさせられている」のとでは、恐怖感が違う。「ご飯が食べられない」のと「断食している」のでは、同じような状況でも全然違うのと同じです。
逆に、誰かが置いて行かれそうになると、手を差し伸べたくなる。ヒーリングも、それと同じなんです。自分が癒やされたいということが、まず最初の目的でしょう。でも他人に触ってあげて、その人が幸せになったり健康になったりする現場に自分が立ち会い、「自分が助けになった」と感じられる時が、人間は一番幸せなんだと思うんです。
自分でやるチネイザンと、他人にやっていただくチネイザン、どちらがいいのでしょう?
- チネイザンは他人にやってもらうのが、すごくいいんですよ。自分でマッサージしていても、あまり面白くない。チネイザンで触れることは「愛」の行動。自分だけでマッサージしていても「愛」って出てこないんです。
ただ、チネイザンを「受ける」側も、ダラッとしていればいいというわけではないようです。
- 絵だって、黙ってただ見ていればいいというものでもない。鑑賞するにも鑑賞のレベルがあるでしょう。それと同様、チネイザンを受ける方のレベルもあるわけです。多少セルフ・チネイザンや瞑想、呼吸法をしていたりすると、チネイザンを受けた時に全然違うんですよ。疲れたから来て「はい、やってくれ」っていう方は、ただリラックスしたいだけ。そんな方は、どちらかというとチネイザンには向いていないんです。チネイザンはリラクゼーションではなく、自分も積極的に参加しなければいけない。
僕はチネイザンを施術した時、最後に「来週までに、こういう呼吸法をしてきてください」と言うようにしています。そういう形で、自分から参加して行って欲しいと思いますね。
たまにスタジオに来て、呼吸法や瞑想をやる方は多いと思うのですが……。呼吸法や瞑想は、毎日やった方がいいのでしょうか。
- やった方がいいですね。毎日歯を磨くでしょう? 顔を洗うでしょう? それと同じように、一番大切な心は洗っていますか? 呼吸は整えているのでしょうか。冷静に考えると、どちらが大切かはお分かりになるはずです。
「何か特別なことをしなきゃいけない」という思い込みが、腰を重たくしているみたい。歯を磨くのと同じレベルで、呼吸法や瞑想を生活に落とし込めるといいのでしょうね。
- 本当は、そういう癖をつけた方がいいのですが、習っていないから分からないのでしょうね。習慣化すると、しないと物足りなくなる。呼吸法や瞑想も、そういう感じになって欲しいものです。
大内先生は、日本でチネイザンをやっていて、気付いたことがあるそうです。
- 日本人は触ったり、触られたりすることに鈍感なようです。日常生活の中で、お互いに触れ合う機会が、日本ではあまりにも少ない。赤ちゃんとお母さんにはスキンシップがあるのでしょうが、人間は歳を取ったから触られなくてもいいかというと、そんな馬鹿なことはないんですよ。
ハグしたりキスしたりしてスキンシップをとる欧米人と比べて、日本人はお互いに触れ合う機会があまりないようですが。
- ええ。欧米人と比べて、日本人のスキンシップはとても少ないと思います。「触る」「触られる」という行為は、アートだと僕は思います。ただ、やみくもに触ればいいというものではないですけどね。
チネイザン・クラスの受講者の方たちは、お互いお腹を触り合うので、とても仲良くなるんですよ。普段の生活では、なかなかお腹を触り合うことなんてないから、うち解けるんでしょうね。
日常触れ合うことが少ない日本だからこそ、チネイザンを通して互いに触れ合うことに、大きな意味があるようです。
では、大内先生にチネイザンをやっていただきましょう。チョコレート・ルームのベッドに、寺山編集長がお腹を出して横たわります。
「様子を見ますね」と、大内先生がやさしくお腹をタッチします。マッサージしたり押したりするのではなく、ごく軽くなでている感じ。
- 人間って、大自然・大宇宙の一部ですよね? 宇宙がなければ、僕たちは存在しない。僕たちの体の中にあるものは、宇宙にもあるんです。
また、自分という「小宇宙」の中には、内蔵や70兆の細胞という「宇宙」がある。その景色を、タッチして味わいます。「ここ固いなぁ」と「異常」としてとらえるよりは、自然の中に山も谷もあるように、「自然」としてありのままとらえる。人間の体の70%は水ですが、それは体の中に海があるようなもの。その海の状況をタッチして診てみます。
「お腹をやさしくタッチします」
「大腸は、いい感じですね」
大内先生「こっちは脾臓」 寺山編集長「押されると痛いです!」
「ここは肝臓ですが……大丈夫、まだ呑めますよ(笑)」
「おへその下にある風門を押します」
「小腸は複雑なので、時間をかけてタッチします」
これでチネイザン終了。「お腹がグルグル音を立てて、動き出しています! 何かが流れていく感じ」と寺山編集長。風門を押された時は「仙骨のあたりに、ビビビッと来た」そうですが、おおむね内臓はやわらかいようです。
- 巷では「お腹は平べったくて固いのがいい」と思われているようですが、内蔵はみずみずしく、柔軟性や弾力性があるのがいいのです。
人のお腹は顔よりも個性があって、1人1人違って面白いんですよ。顔の表情は、悲しいのに嬉しそうな顔ができますが、お腹はそれができないので正直。悲しい時は、お腹の様子も変わるんです。
お腹を触ることで、内臓の状態ばかりか、感情まで分かってしまうなんて、なんだか不思議ですね。
自分の内臓の状態や感情を、ありのまま受け止めるチネイザン。自分の体内にある小宇宙を感じるチネイザン。お互い触り合って、癒やし・癒やされるチネイザン。チネイザンには色々な可能性が詰まっているようです。
みなさんも「大人の幼稚園」に遊びに来て、チネイザンを通して自分の体と対話してみませんか?
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取材にご協力頂きました |
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