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レインボーブリッジを見渡せる汐留の高層マンションの一室にて、東京・自由が丘のパティスリー「モンサンクレール」などでオーナーシェフを務める、今を時めく有名パティシエ・辻口博啓さんと、アンチエイジングの専門家・米井嘉一先生、寺山編集長の対談が実現しました!
辻口さんと米井先生に、食やスイーツについてのご意見をお伺いしました。果たして、スイーツとアンチエイジングの関係とは、いかに?
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辻口博啓さん(以下辻口):僕はお米を使ってロールケーキなどを作っているのですが、玄米を使ったスイーツも考えているんです。
米井嘉一先生(以下米井):玄米はいいですね。固めの玄米を噛むこと自体が、脳の活性化に関係してくるのです。1回に噛む回数を増やすだけでも、大分違ってきます。
辻口:噛むと基礎代謝が上がると言いますね。そういうことを分かった上で、玄米入りのクッキーなどを売るといいと思うのですが。
米井:そうですね。玄米入りのお菓子を売るだけではなく、同時に玄米を活かす生活を提案できるといいですね。 |
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辻口:噛むことによるメリットや、玄米を少しずつ摂取することで玄米を分解できる体に変えていく、というような補足をいれると、お客様は「このクッキーを買おう」と考えるのではないかと思うのです。
米井:玄米自体には弱点もあります。玄米の胚芽の部分にフィチン酸というリンが含まれていて、カルシウムの吸収をゆるやかに抑制するため、骨に対しては100%完全にプラスではないのです。それに、骨に機械的な刺激がないとビタミンやミネラルは沈着しないので、食べるだけではなく、よく噛むなど、体を動かすという指導を同時にするべきでしょう。せっかくいいものなのに、使い方が悪ければ逆効果になってしまいます。
寺山編集長(以下寺山):市販されている玄米クッキーは、噛みごたえがあまりないですね。
辻口:玄米を粗めに切って炒り、それをクッキーの中に混ぜると、噛みごたえが出るのではないでしょうか。
寺山:噛むことは大事なことですから、玄米らしさを残した方がいいですね。
米井:そうですね。それからもう一つ大事なのは、玄米の場合は籾殻を残しているから、その分普通の米以上に、有機減農薬などに気を付けなければいけません。
寺山:一緒に摂取してしまうからですね。今は白米以外にも、五穀米や玄米などが色々出ていますが……。
米井:発芽玄米というものがあります。発芽玄米の方が、玄米よりも含まれている成分は少ないのですが、消化はすごくいいです。
寺山:ビタミンなども、白米だけよりは摂れるのでしょうか?
米井:そうです。発芽玄米にはGABA(γ-アミノ酪酸)が入っており、その作用で血圧も少しいい方向に下がります。最近ストレス対策で、GABA入りのお菓子がありますね。
辻口:とても売れていますよね。先生が先ほどおっしゃっていた玄米と発芽玄米の違いなども、我々パティシエ・職人は知っておくべきだと思うのです。実際に消費者と話している我々にとっては、すごく大事なことです。噛むことの大切さや、唾液の分泌についてなどを、お客さんに説明するのとしないのとでは、素材としての受け取り方や、食べることの意義が全く違って来るからです。そういう意味では、米井先生のように、研究をなさっている方の見地から色々教えて頂けるのは大切なことです。ぜひご指導をお願い致します。 |
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寺山:旬のものは体にいいと言います。栄養がたっぷり含まれていて、それぞれの素材が活かされるからでしょうか。
米井:それはありますね。女性栄養大学の教授のデータで、旬のものと季節外れのものでは、同じほうれん草でもビタミンの含有量が全く違うという結果が出ました。
寺山:私たちの世代には、スーパーマーケットが日常の中に浸透しています。年中スーパーに野菜があるので、その季節の野菜は何なのか、あまり把握できていない主婦や母親も多いのです。体にいいものを摂ろうという反面、病気にならないと病院に行かないなど、日常生活のバランスが今すごく難しくなってきていると思います。健康に対する意識はものすごく高くなっていると思うのですが、一方ではサプリメントを欠かさない状態です。
辻口:巷ではサプリメントが出回っていますが、あれは本当にいいのでしょうか。機械で作られているので、大丈夫なのかと不安になります。素材そのものを摂った方がいいような気がしますが……。
米井:もちろん、基本が食事です。でも、特に50、60、70代になってくると、食事だけでは追いつかないことがあるのです。食事で摂りきれない部分を、サプリメントで補うという形です。若い人は食事だけで十分でしょう。
辻口:本来は50、60、70代でも、自然なものを料理として出して、サプリメントに頼らないで摂取していく方がいいのでしょうか?
米井:それを心がけるべきですね。本来であればそれが理想です。天然で有機の、色々な食材を食べるということが基本になります。 |
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寺山:「甘いものは止めなさい」と、スイーツはとかく排除されがちですが、そこに着目されて、次世代の食育としてアンチエイジングスイーツの素材の研究を現在なさっているそうですね。進捗状況はいかがでしょう?
辻口:スイーツの上で、流通革命を起こしたいと思っています。スイーツの流通革命とは、添加物なしで長期保存できるスイーツを作ることです。板チョコ感覚でパクッと食べられるようなお菓子を、今考えています。実用新案を取って、これから広めていこうと思っているのです。
寺山:最近、アンチエイジングレストランや有機野菜などもそうですが、「体にいいもの」と言われると、本当においしいのかと思ってしまう消費者も出てきているのではないでしょうか。
辻口:アンチエイジングスイーツが、「玄米をよく噛んで食べた方がいい」というような情報を、皆さんに知らせていくきっかけになればいいと思っています。1つの素材にしても、色々な意味がありますよね。スイーツなどで応用をきかせていけば「この素材にはこういう根拠があるから、こうやって食べればいい」と、消費者は自分達で分かるようになると思います。そうすれば、もっと食べることや選ぶことについて、楽しみを見出せるのではないでしょうか。 |
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寺山:消費者が楽しく選ぶということは大事ですよね。
辻口:そのためにも、どんどん米井先生に色々な考え方を習って、その中でスイーツにも食べ方提案を取り入れていきたいです。
米井:一つの例ですが、チョコレートでも香料が入っていないものを食べていると、香料入りのものを食べた時に気になるようになります。香料が入っているものばかりを食べていたら、それが普通だと子供たちは思ってしまうのです。スイーツもそうですが、やはり添加物がないものを子供たちには食べてほしいですね。
辻口:着色料にしても、香料にしても、気を付けたいですよね。
米井:ええ。添加物がない本物をお母さん方に知ってもらって、お子さんに食べさせるということに力を入れて欲しいと思っています。 |
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