「私達はバブルのおかげで、いい意味でも良くない意味でもいろいろな経験を積みました。そして、少しでもいいもの、量ではなく質というヨーロッパ型が日本でフィットすることにすでに気づいています。土地の大きさ・近隣の家との距離・街のお店屋さん(専門店)の大きさなど、まぁ、ライフスタイル全般を見渡せば、すぐに気づくことですが、それと相まって、デパ地下の存在やお取り寄せなど、真に良いもの・おいしいものを目ざとくかぎつける女性達のレベルの高さもあります。もしかしたら、東京は寄せ集めになっていて、本来のものは地方にありき、かもしれませんが、"安全"という意識が今、全国的にとても高い時期ではないかと思っています。話は少し変わりますが、統合医療が、ここ数年で明確に打ち出されてきています。その中でも食はとても大事なのは、皆さんご存知の通りで、医食同源ともいいますが、日本は明治時代に西洋医学をお手本とし、漢方医を排除した時期がありました。その結果、和漢医が表舞台から追いやられてしまった。歴史の中で通らなければいけなかったとすれば、そこから新たに学ぶものがあるはずです。」
全く同感である。本来の日本人の舌の敏感さを取り戻さねば!次世代に渡っても。
「余談かも知れませんが、私、茶道をしているので、明治・大正生まれの女性達にお目にかかる機会があるのですが、その方々のなんと謙虚で凛としていることか。そして豊かさや深みがあるのです。季節感・食文化など、残念ながら戦後、私達に引き継がれなかったものが、そこにはあります。もっと伝承し引き継がなければ、日本の食文化は一体どうなるのでしょう。」
食べるのが精一杯の時代に引き継ぐどころではなかったであろう。でも日本人が培ってきたものを潔く捨てすぎたのかもしれない。明治時代の文化の転換期にお城を壊し、戦後人々の価値観が変化した際にも食を捨て、次世代に伝えなかった。また潔さが美徳であった時代の男性は戦後のビジネスが世界標準のビジネスと、その頃の潔さとのギャップが男性を変えてしまったのかもしれない。今、必要なのは獲得する事ではなくて謙虚さかもしれないと思う。待つ事の大事さ。周りを見て、気づく事。全体の中の一人。丸く収まる術。年寄りの知恵。それが、鈴木さんの見たお茶の世界、「虚であれば益を得る」世界なのではないだろうか。
「本質を感性で取られることができるのが食の世界です。生産者側の顔が見えるのが、化粧品の工業規格製品との違いかもしれませんね。バブル後、お金だけでの評価ではなく、日本人の立ち振る舞いや文化性が世界で評価されつつある今、日本人はもっと自信を持てると思います。私自身、なんとなく日本人として恥ずかしい、という気持ちではなく、本質を認めてもらえた、というのはうれしいですから。」
「賑やかな食卓の楽しさは伝えたいですね。ただ団塊世代はアメリカ型。アメリカンファミリーに憧れて、大きい冷蔵庫と大きいテレビとリビング。経済至上主義=大手スーパーの手法で、モノを消費し囲まれることが豊かさと贅沢の象徴、そして仲のよい友達親子・・・これは果たして日本人の本来の姿でしょうか。お友達感覚で社会に出て行けるのでしょうか。日本人としての食卓の重要性や社会性はどうなっているのでしょう。小さい頃の記憶の片隅にある、箸の上げ下げから残さずきれいに食べる事・・・やかましい、と思うほど口うるさく言う人、が今、不在なのではないでしょうか。すべて昔に戻るのがいいのではなく、昔のよいところまで捨ててしまったことに反省点を持ちたいですね。
まさに食は、文化なのですから。」
「最後になりますが、栄養をきちんと吸収するには腸内環境が整っていることが大事。化粧品は心がキレイな事が重要です。」
吸収するところは肌や口ではなく、本当は内側にある。
エンドユーザーは脳みそもどんどん賢くなって、選べる目を持つべき。お金や薬、病院が国を支えるのではない。支えるのは人間なのだ。さらに突き詰めれば、どの業界も人間力なのではないか。食品衛生法の中で仕事をする、厚生労働省の中で仕事をする、事なかれ主義ではビジネスも志も成り立たないのだから。
これに加えて、人間として生きていくツヤとは、心の豊かさも不可欠だろう。まるで連想ゲームのようだけれど、心を満たしてくれるもの、それはこれからは量より質の時代かな、と実は私も感じていた。そしてトマトの話にも妙にうなづける自分がいる。
「私、実はね、コチコチに頭のカタい研究スタッフとやりあったことがあるのです。
化粧品は肌に緩和なる作用をもたらす。
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鈴木小夜子さんと |
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これは薬事法の中の一文で、もちろん法律の基準は国によって違いますが、ヨーロッパなどでは化粧品の効能効果は、すでに真皮層まで表現できるんですね。でも日本は緩和なる作用だから、角質層までだし、緩和であって効果ではない、と。だったら誰も買わないじゃないですか(笑)。こういった法律の中でビジネスをしていくことで法律の根本を考えたりしたこともあったくらいです。」
コスメ・エステ・フード → さて次は?
「この年齢になって勉強させていただける環境にあることに感謝しています。教えてもらえなくなったら、終わり、のような気がして。今はまだまだ修行の身なので、フード産業での関わりの中で、様々な事を吸収していきたいと思っています。」
ますます生き生きと語る鈴木さんなのであった。 |