野菜、お米、お肉、調味料......食材に「力強さ」とか「元気よさ」を感じられるってことは、そうそうないと思う。
減農薬とか、無農薬とか、有機栽培とかナントカ栽培とか、そんな次元ではなく、「味が濃い」「甘みが強い」「凝縮感がある」といった、食材本来の美味しさとはこのことだろう!と思わずにはいられなかったのが、「六本木農園」で食べたメニューでした。
近年、食に関しての意識が高い人も増えてきて、「おいしい野菜」「おいしい食材」といった点をウリにしているお店が増えた。六本木農園はそれにプラスして「農家の娘・息子たちがてがけるレストラン」というのが特徴的。チーフシェフの舘野さんはブドウとお米を作っている農家の娘さん。園長の堀田さんのご実家は、魚関係。その他のスタッフの方々も、ご実家の多くが農業を営まれている。「農家のいい面、そうでない面の両方を見てきているからこそ、今の状況から私たちにできることがあると思っています。農家さんの中には、独自の販路をまだ開拓できていない人や、就農してまだ数年という人もいます。私たちはそんな頑張っている人たちと積極的に協力して、日本の農業を魅力あるものにしていきたいんです」と舘野さん。そんな自分たちのお店を農業実験レストランと呼んでいた。
それらを食材の持ち味を活かして料理。シンプルな料理法のものも多いけれど、薄口薄味調理というわけではなく、メリハリがある感じ。盛りつけがお洒落だけど気取った感じはしなくて、どこか家庭料理的な味わいに仕上がっている。香りにいたってはいい香りで、特に炊きたてのご飯の匂いは、うっとりレベル。炊きたての香りが苦手という人もいるけれど、いいお米をお釜でパパッと炊くと澄んだ甘い香りになるのかもしれません。
さてさて、どんなメニューなのか見たいでしょ? では出し惜しみせずにご紹介いたしましょう。
<右> 六本木農園のメニューは3つのコース料理が用意されていて、私たちはリーズナブルなコースを2人分と、お肉料理を追加で注文。コース料理は食材の旬や収穫を考えて、ほぼ月1回ペースで変わっているそう。
火を入れる前に、糀をパラパラと。「この糀は菌を殺さないために冷凍して運んでます。フワフワの繊維が生きている糀菌。糀が元気な証拠で、お米に花が咲いたと言ったりします(だから米+花で糀)。うまみと甘みを引き出してくれるんです」と堀田さん。糀を調味料のように使うのが新鮮。この糀は大分県佐伯市で320年続く糀屋本店のもので、私たちも購入可能(編集長は早速ネットショッピングしてました〜)。
元気な食材...とでも言えばいいんだろうか。口にしただけで、味が違う、食感が違うというのがわかる。普段スーパーに並んだものに慣れていると、それはそれで便利で欠かせないけれど、やはり大量生産されたものと、少量ながらも質にこだわったものの差は感じてしまう。きっと栄養素も格段に違うだろう。今の時代には、どっちも必要。でも、食材の本当の味、おいしさというのは知っておいたほうがいいと思う。やはり本物を知ってこそ他がわかるんじゃないかと思う。口に入れただけで、味わったたけで、笑顔にさせてしまうパワーは、食の一部だと思うから。
六本木農園は農家の娘・息子たちが、日本の農業を魅力的にしていこう・活性化しようという心意気を持ったレストランだが、そういった側面を知らなくても、お店で出される食の豊かさは十分に魅力的。また、取って付けたような調理ではなく、深みのある味が楽しめるのは、メニュー開発を一手に引き受けているシェフの舘野さんのセンスだと思う。
シンプルに食材の力強さを実感することができた。こういうお店がもっとあったらいいのにな。