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モンナージュ編集部
ドクター監修のアンチエイジングトピック
メディカル
女性の大敵! 万病のもと「冷え性」をあなどらない
冬になると手足が冷えて辛い……そう思いながらも「体質だから仕方がない」と諦めている方は多いのでは? 夏でも電車の中やオフィスの冷房で冷えるなど、現代では季節を問わず、私達は冷える環境に取り巻かれています。 今回、女性のための漢方診療を行う「麻布ミューズクリニック」院長の渡邉賀子先生に、冷え性のメカニズムや冷え性が引き起こす病気や症状、そして冷え性の改善法についてお伺いしました。冷え性は万病のもと! 軽視しないで、できることから生活を見直してみませんか?

 麻布十番の駅近くにある「麻布ミューズクリニック」。外観にアジアン・ビューティの絵が描かれたお洒落なクリニックのドアを開けると、落ち着いたインテリアの待合室があり、院長の渡邉賀子先生がにこやかな笑顔で出迎えて下さいました。
 「麻布ミューズクリニック」は、現代医学的な診断を行ったうえで漢方薬を中心とした内科治療を行い、併設する鍼灸院でマッサージや鍼灸治療も受けられる、女性のためのクリニック。院長で医学博士の渡邉先生は、ひどいニキビに悩まされていた研修医時代に友人から漢方薬をすすめられ、3ヶ月後に完治したご自身のご経験から、統合医療の道に入られたそうです。
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どうして冷え性になるの?

モンナージュ:
まず、冷え性のメカニズムを教えて下さい。

渡邉賀子先生

渡邉賀子先生(以下渡邉先生):
手や足、下半身などの体の一部や全身が冷えて、それを苦痛に感じる状態を冷え性といいます。冷え性には多角的な要因が含まれているため、単純に「血流が悪くて冷えている」だけでは説明できません。
食事を食べて体内で熱を作り、血液でその熱を配るという体温調節のメカニズムがあるのですが、ダイエットをすると発熱量が少なくなり、熱が供給されなくなるため、若い女性の冷え性の大きな原因になっています。若い女性では、断然やせ型の方に冷え性が多いですね。それと、食べ物をエネルギーに変えるというルートから考えると、ストレスによる食欲不振や胃腸虚弱も冷えの原因。
また、熱は代謝の過程で主に肝臓で作り出されるのですが、実は熱を一番作り出しているのは、筋肉による運動なんです。一日の熱エネルギーの約6割は筋肉が作り出しています。なので、運動不足も冷えの原因になります。冷え性は女性に多いと言われますが、これは女性は男性に比べて約10%筋肉量が少ないことも一因です。
このように、食べ物と運動は熱を作り出す大もとです。そうやってできた熱を血液で体内に配るため、サラサラした十分な量の血液が、体の隅々にまで流れているというのが理想的な状態です。それを阻害するものは、全部冷えの原因になり得るわけですね。末端の新陳代謝が落ちる貧血や、漢方で「淤血(おけつ)」と呼ばれるドロドロの血液、血管が硬くなる動脈硬化も原因になります。血液を送る圧力のことを考えると、心臓の病気や低血圧も関係してきますね。

モンナージュ:
冷え性と自律神経失調症には関わりがあるのでしょうか?

渡邉先生:
末梢血管を開いたり閉じたりしているのが自律神経であるため、冷え性と自律神経失調症が同義で使われていた時代もありました。今は、冷え性は病気の予備軍と認知されましたが、それまでは冷え性は体質的なものか、自律神経失調症の一つとして考えられて来たのです。
交感神経は「闘う神経」で、ハッとした時に末梢の血管を閉めて、体幹部に血液を集めます。そのため、手足が冷たくなるのです。逆にホッとするような環境下では、交感神経の緊張がほぐれて副交感神経にスイッチし、末梢の血管が開いて血液が流れます。血流の実験をしていると、嫌な上司の名前を言っただけでも、ぎゅっと血管が縮まってしまうのですよ(笑)。自律神経は、何かがあった時に勝手に動いてくれますが、とても精神的な影響を受けやすい。だから、ストレスがかかると血管が閉まり、冷え性にもつながるというわけです。

モンナージュ:
自律神経の乱れからくる冷え性というのは、最近多いのでしょうか。

渡邉先生:
そう思います。本来日本人は四季に適応していて、夏に比べて冬の方が1割くらい代謝が高いのです。ところが、今は冷暖房で一年中同じような気温の室内にいるため、1割の代謝の変動がなく、冬も夏も同じような代謝になっていると想像されます。その割には、室内と室外の気温差が大きいでしょう。冷暖房のおかげで快適なかわりに、夏と冬に対する適応能力が落ち、更に室内と室外の極端な温度差に適応しなければならないので、自律神経的にも代謝的にもバランスを崩す要因がたくさんあります。現代人は暑さにも寒さにも弱くなって来ているんですね。

モンナージュ:
ストレスというと精神面を考えがちですが、温度差は体にとってもストレスになるんですね。

渡邉先生:
その通りです。冬より夏の冷え性が辛いという女性も多いですね。電車の中やオフィスなどは、背広にネクタイの男性に快適な温度になっていますが、半そでにミニスカートの女性にとっては冷蔵庫に入っているようなもの。冷え性は現代病的な側面もあると思います。

モンナージュ:
冷え性は昔からあったのでしょうか。

渡邉先生:
約70年ほど前の文献にも、冷え性についての記述があったようです。しかし、女性の「妻」「母」という古典的な役割に加えて仕事もあるため、現代の女性は現代特有のストレスにさらされているのです。また、生活の変化による影響も大きいでしょうね。本来、朝体温が一番低く、朝ごはんを食べることで体温が上がり、夕方に体温を外に出してゆっくり安眠に入る、という流れがあるのです。ところが現代では、夜遅くまで起きていて、朝起きられなくて朝食も食べずに出かけ、体温が低いまま活動性のにぶい午前中を過ごし、夕方にようやく体温が上がって来て、興奮したまま眠れない、という悪循環になっているのです。

モンナージュ:
ん〜、耳が痛いですね〜〜(笑)。

2

どうして「冷え性」は良くないの?

モンナージュ:
昔から女性にとって冷えは良くないといいますが、具体的にどうして良くないのでしょう?

渡邉先生:
冷え性は免疫系と関係しています。婦人科の先生方が「以前と比べて、女性の基礎体温が下がった」と言っていますが、これはダイエットなどの様々な要因で代謝が低くなり、基礎体温が下がりがちになっているためです。体温が下がるということは、それだけ免疫力や代謝が下がるということ。そうすると太りやすくなり、更に末梢の血流が滞って新陳代謝が悪くなり、肌荒れやくま、しみなど、肌のトラブルも出て来ます。
また、古典的に冷えと一番関係があるといわれているのは「痛み」。冷えると血管が収縮して痛みが出て来ます。頭痛や生理痛、関節痛を暖めたら楽になった、という経験がある方は多いと思います。加えて、冷えて血流が悪くなると、肩こりにもなります。
そして、意外かもしれませんが、統計を取った結果、全ての年齢で冷え性と一番関係があったのは「疲れ」なんですよ。若い方で疲れを感じている人の多くは、冷えを感じているのです。漢方では冷えは腹痛や便秘にも関係しているといわれています。冬季うつ病という言葉もあるように、冷えると気分が沈んだり、イライラしたり、眠れなかったりするのです。
病気でいうと、甲状腺機能低下症や心臓疾患、膠原病などの症状のひとつとして、冷えが現れることもあります。リウマチや喘息も、冷やすことで悪くなるのです。冷えると体幹部に血液が集まるため、高血圧も助長してしまう。風邪も寒い場所にいたなど、冷えが原因のことが多いのではないかしら。冷えは「万病のもと」であり、様々な病気や症状に関係しているのです。

モンナージュ:
冷え性がそんなにたくさんの病気や症状に関係していたとは、知りませんでした!

渡邉先生:
ええ。でも逆に言えば、冷えを取るような生活をしていけば、日常生活の中での色々な体の不調を取っていくことにつながるのです。

モンナージュ:
冷え性で来院される患者さんの傾向は?

渡邉先生:
月経痛やPMS(月経前症候群)が多いですね。冷え性だけで来られる方もいらっしゃいますが、何か他の症状を抱えていらっしゃる方が大多数です。便秘の方は冷え性だという自覚がなくて来院されますが、お腹を暖める成分の薬をお出しするだけで便秘が解消することも。また、むくみを訴える方もいらっしゃいますが、むくみも冷えと関係が強く、末梢に送られた血液が停滞し、水分が下肢に溜まって起こります。そのような症状が出て始めて、冷え性の弊害に気づく方が多いですね。

3

統合医療であることについて

モンナージュ:
統合医療が注目されるようになったのは、最近なのでしょうか。

渡邉先生:
そうですね。以前は、普通の医師が漢方薬をやるというと、変わった人という目で見られ、私のように自らの強烈な体験がないと足を踏み入れない世界でした。ただ、西洋医学には限界もあり、次第に漢方が注目されるようになって来ています。診断や手術は最先端の西洋医療で行い、その他に漢方や鍼、アロマなどの選択肢もある方が、患者さんのためになります。そういう意味では、近年の統合医療は非常にいい形になっていると思います。西洋医学の検査で異常がないのに辛さを感じている方を、漢方的な側面で診てみると、どこかしら体のゆがみが見つかります。病気になる前の、漢方でいう「未病」の状態で不調をケアし、生活習慣を直すといいでしょう。

モンナージュ:
麻布ミューズクリニックでは、西洋医学的な検査をしてから漢方薬を処方するのですか?

渡邉先生:
そうです。自分で漢方薬を購入して飲んでいた方がだるさを訴え、検査してみたら肝機能障害だった、ということもあるので、血液検査を実施しています。ただし、3ヶ月以内に検査をした方は、その結果を持ってくれば検査は不要です。知らない方も多いようですが、漢方診療は保険適応になることが多く、その場合は漢方薬にも保険が適応されますので、安心して相談に来て下さい。

4

冷え性の対策はどうすればいい?

モンナージュ:
冷える人と冷えない人の違いは何でしょう。

渡邉先生:
もちろん体質もありますが、冷える要因としてはストレスや環境、生活習慣、そして食事も大きいですね。

モンナージュ:
生活の中でできる、冷え性の改善法はありますか?

渡邉先生:
私がいつもお答えするのは「朝ごはん」「運動」「お風呂」。若い女性は忙しくて、「一年中シャワーだけ」という方が多いですが、お風呂はとても大切。お風呂に入ると「ほーっ」としますよね。その「ほーっ」が、交感神経から副交感神経に切り替わる大事なきっかけになります。音楽、アロマ、お茶もいいですが、お風呂は気持ちがいいし、きれいになるので、おすすめです。また、水圧でむくみが取れたり、浮力で腰の筋肉の血流が良くなったりというメリットもあります。ただ、熱いお湯だと逆効果なので、ぬるめのお湯にゆっくり入るといいでしょう。

モンナージュ:
食や食生活について、何かオススメはありますか?

渡邉先生:
ショウガは体を温めるため、冷え性にとても良いですよ。また、ショウガは胃腸にもやさしいため、おみそ汁やおひたし、紅茶に入れるなど、食事に取り入れやすいですよね。皮の部分にも薬効成分が多いため、皮ごと使うといいでしょう。漢方のかなりの生薬に「健胃生薬」としてしょうがが入っています。これは、どの薬も胃腸で吸収されて、始めて薬効が現れるからです。とうがらしやにんにくにも温める作用があるのですが、胃の弱い人には向きませんね。
それと、朝は温かいスープを飲むことをオススメします。朝いきなり冷たいものを飲んでしまうと、それを温めるのにエネルギーを使ってしまうからです。この時期の夕食としては、鍋がオススメ! 温かく、味のバリエーションがあり、色々な野菜やたんぱく質が食べられるからです。炭水化物は、夜食べると燃えずに体に溜まるので、翌朝雑炊やうどんにするといいですよ。

モンナージュ:
最後に、モンナージュの読者にメッセージを!

渡邉先生:
女性専用のクリニックを開いて実感したのですが、若い女性はみんな頑張り過ぎて疲れ、不安や悩みを抱えています。悩みがあったら一人で抱え込まないで! 「自分だけ」と思うことでも、話してみたら、意外とみんな同じようなことで悩んでいるんですよ。「自分がやらなくちゃダメ」と頑張りすぎて、会社を休まなければいけなくなる。でも、そういう方は会社を休んでいても、心が休まらないんですよ。何もかも完璧にやろうとすると、無理が体や心に返って来るもの。少し脱力して下さい。頑張り時はあると思うけど、頑張りすぎないで欲しいですね。

 渡邉賀子先生プロフィール
渡邉賀子先生

「麻布ミューズクリニック」院長
医学博士・日本東洋医学会専門医・指導医
久留米大学医学部卒業。熊本大学第三内科に入局、内科を修める。1997年、北里研究所にて日本初の「冷え症外来」を開設。2003年、慶應義塾大学病院漢方クリニックにて、女性専門外来「漢方女性抗加齢外来」を開設。現在も引き続き担当している。應義塾大学医学部漢方医学講座非常勤講師。
ホームページ >>

渡邉先生の著書がNHK出版よりの発売されているとのこと。リンクを貼っておきますので、興味のある方はチェックしてみて。
『10パーセント脱力生活 カラダ篇』渡邉賀子先生監修
NHK出版サイト >>

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