今までアンチエイジング治療は全て自由診療でした。自由診療には健康保険が利きません。2〜3割自己負担の保険診療と比べて、自由診療は高額になるため、予防医学として非常に優れていても、一般の方々にはなかなか取り付きにくい面があるのも事実。一部の健康に対する意識の高い方や、金銭的に余裕のあるセレブリティーの方が、その恩恵を享受しているといった傾向も実際にあります。ところが今回、米井先生より吉報がもたらされます!
米井:アンチエイジングを真に理解した医師たちは、自らどんどん良いことを行っています。例えば、京都大学の中にアンチエイジング外来ができたのをご存じでしょうか。母体は老年内科ですが、このアンチエイジング外来は保険診療で行っているんです。患者さんは骨の老化や動脈硬化が進んでいる老人の方々ですが、その方々にアンチエイジング外来は、まず名前で希望を与えているからすごく良いのです。それまで「老年内科」に通っていた骨粗鬆症の患者さんが、「アンチエイジング外来」という名前でやる気になる。同じ内容の治療を行っていても「私たちはアンチエイジング外来に通っているんだ!」って、嬉しくなるんです。
森田:それは非常に良い取り組みですね! 保険診療でアンチエイジング治療を行えないことが、今までネックになっていたのですが、京都大学の取り組みはモデルケースになります。
寺山:患者さんにとってアンチエイジング外来に通っていることが、ちょっとしたステイタスにもなりそうですね。名前の違いでやる気になるなんて、革新的!
米井:ええ、革新的です。骨粗鬆症の他にも、動脈硬化や筋肉の衰えの治療など、健康保険を使ってできるアンチエイジング治療は色々あります。
寺山:米井先生は以前、「老化は足から来るから、歩かないといけない」とおっしゃっていましたが、歩くためには筋肉が必要ですよね。年齢を重ねると共に筋肉が落ちてしまい、歩かないと骨密度も落ちるという悪いスパイラルにはまり、そこから脱却するのが大変になってしまいます。アンチエイジング外来に行くことで、「まず歩くことから始めよう」と前向きな気持ちに変わるだけでも、大分違いますよね。
米井:ええ。他の科で相手にされなかった患者さんたちも、アンチエイジング外来に来ることで「やればできるかも!」と、希望を持ちますからね。
森田:80歳近くになると、いつお迎えが来てもおかしくない世代と思われていますよね(笑)。でもアンチエイジングの見地から言うと、人間は120歳くらいまでは生きる可能性を持っているので、80歳の方だとまだ寿命が40〜50年あるわけです。
寺山:そう考えると、「70代80代はまだまだ若い」とことになりますよね。
米井:4月から75歳以上の高齢者を対象に「後期高齢者医療制度」が施行されましたが、「後期高齢者」なんて名前が悪すぎます!(笑) とても失礼ですよね。
寺山:今は65歳でも「高齢者」ということになっていますが、世の中の65歳の方々って、全然老人じゃないですよね。
森田:120歳が人間の寿命と考えると、まだ人生の半ばですからね! ようやく中年に差し掛かったかなっていうところですよね。
寺山:最近では40〜50代の方々も、見た目も若くどんどん体力がついていて、元来のその年齢のイメージに染まっていない方がいっぱいいますよね。
米井: 80歳になった時に60歳くらいにしか見えない方たちが、これからどんどん出て来ると思いますよ。
寺山:そうなった時に、抗加齢医学会のように色々な科の医師が横の繋がりを持っているというのは、非常に心強いですよね。 |