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現代の30〜40代の女性は、「最近忙しい?」「うん。あなたは?」という会話が挨拶代わりの毎日を送っていることでしょう。この時期は、仕事もバリバリこなし、交友関係も華やかで、経済的にも余裕があるため、仕事も恋も遊びも全部頑張ってしまうのです。確かに体力も気力もあるうちは忙しくても疲れませんが、そんな生活は長続きしません。「燃え尽き症候群」やうつ病になるケースも少なくないのです。今は大丈夫でも、10〜20年後にはつけがまわって、体がボロボロになってしまうかもしれません。
子育て中の主婦も同じ。子供に関しては「待った」がきかず、体調が悪いなぁと思っていても、つい見過ごしてしまうこともあるでしょう。今の社会環境では、仕事をしながら育児をしている人は、なおさら大きな負荷がかかります。
だからこそ、今、発想を変えて欲しいのです。
アンチエイジング医学は、「最も充実した30歳の体と、円熟した心を持つ」ことを理想とし、その状態を10年20年、さらにはそれ以上の年月にわたって保つように努める医療技術です。30歳からアンチエイジングライフを実践していると、40歳になっても急激な体力の衰えを感じることなく、マイペースでそれまでの生活を維持できるのです。 |
全ての生き物には寿命があります。種によって平均寿命は異なりますが、その差は細胞分裂の回数によってもたらされます。人間の細胞分裂の回数は、約50回と言われています。50回の細胞分裂を寿命に換算すると、120〜130歳になります。
人間の体を形成するほとんどの細胞は、決まった回数の細胞分裂をすると、分裂をやめて「老化細胞」へと変化します。これには、DNAの両端にある「テロメア」という部分が深く関係しています。最新の遺伝子医学では、テロメアに直接介入して寿命を大幅に伸ばす研究も始まっています。この治療法は、がんやアルツハイマーなどの特定の疾患のためのものだと研究者たちは強調しますが、この研究と抗加齢医学とを混同しないで欲しいですね。
抗加齢医学の見地から言わせて頂くと、細胞分裂の回数を伸ばすことよりも、今ある生命力を駆使して「充実した生活」と「健やかで幸せに満ちた老い」を実現していくことが、21世紀の医学のあるべき形だと思うのです。
永遠の命は存在しませんし、存在してはならないのです。世代交代によって社会はリフレッシュされ、命を次の世代に渡すことで「センチメンタリズム」が維持されるからです。「センチメンタリズム」がなければ、人間特有の繊細な感情も生まれませんし、恋愛も文化も芸術も生まれないでしょう。
「元気で美しかったおばあちゃん」の思い出は、「あの人を超えたい」という希望や「あの人にまた会いたい」という夢につながります。誰かを思う感情は心の中に生き続け、次世代に寄与していくのではないでしょうか。
抗加齢医学は、このように「人が人らしく生き、幸せに老いて死んでいく」理想を実現するために存在しているのです。 |
アンチエイジングが実践できている人は、バランスよく年を重ねている人です。健康で長寿の人たちも、特別に何かに秀でているというよりは、「特に悪いところがない」人がほとんどです。
アンチエイジング医学の基本は、自分の弱点を知り、そこをケアしていくことです。その指標の一つとして、老化度判定ドックが挙げられます。人間ドックには、骨年齢や血管年齢の測定や、血液検査でホルモンの血中濃度などを調べるオプションがあります。それにより自分の体の弱点を見つけ、医師から客観的なアドバイスを受けることができます。
実際に、エイジングドック(老化度判定ドック)を受けたある女性の患者さんのケースを、参考までにご紹介しましょう。 |
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症状=20代の後半から、人より体力・根気がない気がしていた。 |
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同年代の人に比べても、肌の潤いが少ないように感じられる。 |
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生理の量は多くはなく、生理痛もわずか。 |
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最近の体調不良の原因は、早めに来た更年期障害かと思い、婦人科でホルモン量を測ってもらったが、標準範囲におさまっていた。 |
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強いて言えば、標準範囲でも低めの方だった。 |
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この方は、ライフスタイルには特に問題は見当たりませんでした。仕事のストレスはやや多めですが、運動も定期的に行っており、食事にも気をつけているそうです。タバコも吸わないし、お酒はたしなむ程度、コミュニケーションも盛んでした。
抗加齢ドック血清エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、DHEA−sを測定したところ、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンは正常で問題ありませんでしたが、DHEA−sは600ng/mlで、同年代に比べてかなり低めという結果が出ました。ただ、一般的に言えば病気の範疇ではありません。
基本的にこの年代にはホルモン療法は行いませんが、患者さんとの話し合いの結果、DHEAホルモンを1日25mg補充してみることにしました。服用を始めて1週間もしないうちに、患者さんから「だるさがとれ、最初に来た生理は痛みが今までになく強く、生理の量も増えた。自分に足りなかったものが、この治療によりしっかりはまったと感じた」という、明るい顔での報告がありました。
こういった対応ができたのは、病気発見のための人間ドックではなく、今の体の状態を知るエイジングドック(老化度判定ドック)だったからです。
皆さんにもぜひエイジングドックを受けて頂き、ご自分の弱点を知った上でケアして、バランスよく年を重ねて頂きたいものです。 |
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