女性に肛門疾患が多い理由には、女性が便秘しがちなことのほか、妊娠や冷えなど女性特有の原因が挙げられるそうです。どんな原因があるのか、松村先生に具体的に教えて頂きました。
●黄体ホルモンの分泌
生理の周期がはっきりしている人は、黄体ホルモン分泌の関係で、生理の1週間前から便が硬くなります。黄体ホルモン期は体に水分をため込むため、便の中の水分が減るので、便秘する方が多くなるのです。ただ、生理中に便秘になる方もいらっしゃるんですよ。そういう方は生理前には下痢になるそうです。月経前症候群の一つですが、恐らくストレスでお腹の動きがおかしくなっていると思われます。
●朝食抜きダイエット
朝食抜きダイエットも、便秘の原因の一つです。便秘にも色々タイプがあり、腸が動かない弛緩性の便秘と、おしりまで来て止まってしまう、腸の動きには問題ない便秘があります。弛緩型の便秘の人が朝食を抜くと、ごはんを食べたらお腹が動くという結腸反射が利用できなくなります。朝は一番腸が動く時間帯ですので、朝食を食べて結腸反射をうまく利用しましょう。おしりまで来て便が止まってしまう人は、朝食というよりは便の硬さの問題ですので、水分を便の中に留めておくための、水溶性の食物繊維が必要になります。
●食物繊維不足
食物繊維の働きには、腸を中から刺激して動きやすくする、便の中の水分を保って便を柔らかくする、腸の善玉菌の栄養になって体全体の体調を良くする働きの3つが挙げられます。
食物繊維がいいと言われて、簡単に摂れるシリアルなどの「小麦ふすま」ばかり食べている方がいらっしゃいますが、小麦ふすまは「不溶性」の食物繊維です。「不溶性」の食物繊維は腸を刺激しますが、便を柔らかくはしないんです。小麦ふすまばかり食べていると、便が硬くなってコロコロになってしまいます。便を柔らかくするには、果物や海草、なめこなどのネバネバするきのこに含まれる「水溶性」の食物繊維を摂りましょう。
●直腸膣弛緩症(レクトシール)
直腸膣弛緩症(レクトシール)とは、直腸と膣との間の壁が弱い場合に、いきみが直腸に向かわず膣側にふくらんでしまうこと。そういう患者さんは多く、診察すると約7割の女性が直腸膣弛緩症ですが、全員が便秘になるわけではなく、その中でも便が硬い人が便秘になります。
●妊娠・出産
妊娠でお腹が大きくなると肛門まわりの圧迫や、骨盤内の静脈が子宮により直接圧迫されることで、血行が悪くなってうっ血が強くなります。妊娠初期は、運動不足や黄体ホルモンのさかんな分泌、つわりによる栄養の偏りなどで、便秘をする人が多いですね。また、出産時は長時間のいきみで肛門に力がかかり、肛門に痔核ができることもあります。
●冷え
女性にとって冷えは万病のもとです。冷えると肛門周辺の血行が悪くなるため、うっ血して痔になることがあります。特に、血栓性外痔核という肛門の外にできる痔は、冷えが原因のことも。患部を温めて血行をよくするといいでしょう。
●ストレス
ストレスで直接おしりが悪くなるわけではありませんが、けいれん性便秘では自律神経が乱れると腸が緊張して、便が通りにくくなります。また弛緩性便秘では、ストレスが強いと腸の「ぜん動運動」(便を押し出す大きな動き)が正しく動かずに、バラバラな動きになり、便がS字結腸の中で行ったり来たりしてコロコロの便になってしまいます。
……確かに女性は、男性に比べて肛門疾患になりやすい要素が多いようです。テレビや雑誌などで「小麦ふすまのシリアルがいい」と聞くと、ついそればっかり食べてしまう方が多いようですが、よい便を出すためには不溶性と水溶性、どちらの食物繊維もバランスよく摂りたいものですね。また、冷えないよう体を温め、ストレスをためないようにすることも大事なようです。 |