トップページへ












自分の歳は自分で決める。成熟世代のアンチエイジングサイト”モンナージュ” 最新号 BACK NUMBER
メッセンジャー
モンナージュ編集部
ドクター監修のアンチエイジングトピック
メディカル
意外と女性も多い!? おしりの疾患とアンチエイジング
意外と女性も多い!? おしりの疾患とアンチエイジング
spacer
意外と女性も多い!? おしりの疾患とアンチエイジング
意外と女性も多い!? おしりの疾患とアンチエイジング
 女性にとって羞恥心が邪魔して、なかなか相談しにくい痔などの肛門疾患。どう処置したらいいのか分からず、恥ずかしくて病院にも行けずに放置するうちに、悪化してしまうケースも多いそうです。しかも、痔だと思っていたら「実は大腸癌だった!」という恐ろしいケースも...。
 なんとなく中年男性に多いイメージを持っていた肛門疾患ですが、意外にも女性の患者さんの方が多いそうです。女性の「隠れ痔主」は多いらしい。
 今回モンナージュスタッフが訪れたのは、女性専門の肛門科クリニックである「松島ランドマーククリニック」。院長の松村奈緒美先生に、女性医師ならではの観点で、女性のおしりケアの大切さについてお伺いしました。
 JRの桜木町駅や、みなとみらい駅からほど近い横浜ランドマークタワー。その7階に「松島ランドマーククリニック」があります。モンナージュスタッフを迎えて下さったのは、笑顔の素敵な院長・松村奈緒美先生です。
 松村先生が3年目の外科医だった頃に派遣された病院では、肛門科の女性患者さんがとても多く、女性の患者さんが受診しやすい環境を作ろうと思い立った松村先生は、松島ランドマーククリニックにて2000年に週1日のレディースデイを作りました。口コミで患者さんが増え、それに従って週1日だったレディースデイが2日、3日と増え続け、2006年についに女性専門の肛門科クリニックになったとのことです。
モンナージュ
1

肛門疾患になるメカニズム

 まず、女性に肛門疾患が多い理由について、肛門疾患のメカニズムから松村先生にお伺いしてみましょう。
 主な肛門疾患である痔には、大きく分けると次の3種類があるそうです。

 ●痔核/ぢかく(いぼ痔)
 排便や出産時の強いいきみなどで、肛門周辺に集まっている毛細血管がうっ血してイボのようにふくれると、痔核(いぼ痔)になります。痔核は2種類あり、直腸側だと内痔核、肛門側だと外痔核です。内痔核が大きくなり、排便の時に便が痔核を引きずり下ろして肛門の外に出てしまうのが脱肛です。便が硬かったり、いきみが強かったりすると、痔核を引きずり下ろす力が強くなってしまいます。

●裂肛/れっこう(きれ痔)
 硬い便によって肛門の出口あたりにすり傷ができてしまうことで、単におしりの怪我です。排便時に痛みを伴い、痛みで排便を我慢すると便がますます硬くなるという、悪循環を起こしてしまいます。反対に下痢などの柔らかい便も、皮膚の炎症を起こして肛門上皮が傷ついてしまうため、良くありません。男性より女性に多く、それは女性に便秘が多いことや、やせようとして下剤を飲むなど、誤ったダイエットにも関係があります。

●痔瘻/ぢろう(あな痔)
 直腸と肛門の境目にある「歯状線」と呼ばれるギザギザには、小さなポケット(肛門小窩)があります。なにかのはずみでポケットに水のような便が入ると中で細菌が増え、まわりの組織を溶かして増殖します。膿が溜まった際には切開して出しますが、細菌で溶かされた組織は完全には戻らず、トンネルが残ってしまうのです。これが痔瘻です。ポケットはとても小さいので通常の軟便なら細菌は入りません。また少しぐらいの細菌なら抵抗力があれば殺せるのですが、睡眠不足や栄養不足、ストレスなどで抵抗力が落ちていると、発症しやすくなります。

 この3つの中でも、痔瘻(あな痔)は手術が必要で、痔の中でもやっかいとのこと。いずれの痔も、便が硬かったり、逆に柔らかすぎたりすることが原因で発症するのですね。

モンナージュ
2

肛門疾患を患う女性って、意外と多い?

 女性に肛門疾患が多い理由には、女性が便秘しがちなことのほか、妊娠や冷えなど女性特有の原因が挙げられるそうです。どんな原因があるのか、松村先生に具体的に教えて頂きました。

●黄体ホルモンの分泌
 生理の周期がはっきりしている人は、黄体ホルモン分泌の関係で、生理の1週間前から便が硬くなります。黄体ホルモン期は体に水分をため込むため、便の中の水分が減るので、便秘する方が多くなるのです。ただ、生理中に便秘になる方もいらっしゃるんですよ。そういう方は生理前には下痢になるそうです。月経前症候群の一つですが、恐らくストレスでお腹の動きがおかしくなっていると思われます。

●朝食抜きダイエット
 朝食抜きダイエットも、便秘の原因の一つです。便秘にも色々タイプがあり、腸が動かない弛緩性の便秘と、おしりまで来て止まってしまう、腸の動きには問題ない便秘があります。弛緩型の便秘の人が朝食を抜くと、ごはんを食べたらお腹が動くという結腸反射が利用できなくなります。朝は一番腸が動く時間帯ですので、朝食を食べて結腸反射をうまく利用しましょう。おしりまで来て便が止まってしまう人は、朝食というよりは便の硬さの問題ですので、水分を便の中に留めておくための、水溶性の食物繊維が必要になります。

●食物繊維不足
 食物繊維の働きには、腸を中から刺激して動きやすくする、便の中の水分を保って便を柔らかくする、腸の善玉菌の栄養になって体全体の体調を良くする働きの3つが挙げられます。
 食物繊維がいいと言われて、簡単に摂れるシリアルなどの「小麦ふすま」ばかり食べている方がいらっしゃいますが、小麦ふすまは「不溶性」の食物繊維です。「不溶性」の食物繊維は腸を刺激しますが、便を柔らかくはしないんです。小麦ふすまばかり食べていると、便が硬くなってコロコロになってしまいます。便を柔らかくするには、果物や海草、なめこなどのネバネバするきのこに含まれる「水溶性」の食物繊維を摂りましょう。

●直腸膣弛緩症(レクトシール)
 直腸膣弛緩症(レクトシール)とは、直腸と膣との間の壁が弱い場合に、いきみが直腸に向かわず膣側にふくらんでしまうこと。そういう患者さんは多く、診察すると約7割の女性が直腸膣弛緩症ですが、全員が便秘になるわけではなく、その中でも便が硬い人が便秘になります。

●妊娠・出産
 妊娠でお腹が大きくなると肛門まわりの圧迫や、骨盤内の静脈が子宮により直接圧迫されることで、血行が悪くなってうっ血が強くなります。妊娠初期は、運動不足や黄体ホルモンのさかんな分泌、つわりによる栄養の偏りなどで、便秘をする人が多いですね。また、出産時は長時間のいきみで肛門に力がかかり、肛門に痔核ができることもあります。

●冷え
 女性にとって冷えは万病のもとです。冷えると肛門周辺の血行が悪くなるため、うっ血して痔になることがあります。特に、血栓性外痔核という肛門の外にできる痔は、冷えが原因のことも。患部を温めて血行をよくするといいでしょう。

●ストレス
 ストレスで直接おしりが悪くなるわけではありませんが、けいれん性便秘では自律神経が乱れると腸が緊張して、便が通りにくくなります。また弛緩性便秘では、ストレスが強いと腸の「ぜん動運動」(便を押し出す大きな動き)が正しく動かずに、バラバラな動きになり、便がS字結腸の中で行ったり来たりしてコロコロの便になってしまいます。

 ……確かに女性は、男性に比べて肛門疾患になりやすい要素が多いようです。テレビや雑誌などで「小麦ふすまのシリアルがいい」と聞くと、ついそればっかり食べてしまう方が多いようですが、よい便を出すためには不溶性と水溶性、どちらの食物繊維もバランスよく摂りたいものですね。また、冷えないよう体を温め、ストレスをためないようにすることも大事なようです。

モンナージュ
3

おしりの誤解!? モンナージュスタッフの素朴な疑問

 松村先生のお話を伺ううちに、素朴な疑問が浮かんで来たモンナージュスタッフ。松村先生に伺ってみたところ、意外なお答えが返って来ました。おしりの誤解、思っていたよりも多いのかも?

●ウォシュレットは痔にいい?
 「おしりをウォシュレットなどで綺麗にすれば、痔は良くなるのでは?」と単純に考えていたモンナージュスタッフですが、必ずしもそうとは限らないようです。

松村先生:痔瘻(あな痔)の場合は肛門から3、4pの場所で起きているので、ウォシュレットで綺麗にしても関係ないんですね。でも、ウォシュレットにはメリットもたくさんあります。ウォシュレットで刺激していると、何回かに1回反射で肛門がぱっと開き、中に水が入って便を溶かして便が出やすくなります。ただ、次第に刺激しないと肛門が開かなくなってしまうので使い過ぎに注意しましょう。
 また、肛門の外の皮膚炎やかぶれは、洗いすぎやふきすぎが原因のことも。おしりは絶対に、ウェットティッシュなどで消毒しないで下さい。アルコールで消毒すると、おしり周辺の薄い皮膚の免疫力が低下しまうからです。

●トイレで長くいきむのは、便秘に効く?
 小学生の頃、保健室の先生に「便秘なら、トイレに長く座っていればいいわよ」と言われた記憶のあるモンナージュスタッフ。しかし、これもケースバイケースでした。

松村先生:肛門科的には、おしりまで便が来ていないと、トイレで長く座っていても意味がないんです。おしりまで便が来ていると、歯状線とその外側にそれが分かるセンサーがあるのですが、便意を何度もがまんしていると、センサーがうまく働かなくなってしまいます。そういう人は、毎日決まった時間にトイレに行き、溜っている便を出すべきですが、そうでない人は座り過ぎない方がいいですね。
 和式のトイレだと便が出やすい姿勢ですし、足がしびれるので長居できませんが、楽な洋式のトイレに長く座るとおしりが腫れて悪くなってしまうので、長居しないようにしましょう。

●便秘の悩みだけで、肛門科を受診してもいいの?
 慢性的な便秘に悩まされている人も、肛門科を受診していいのでしょうか? 便秘だけではダメなのかしら?

松村先生:便秘だけで来院される方もいますが、やはり痔などおしりの疾患を抱えた方がメインになります。便秘で悩んでいらっしゃる方は、内科や消化器科を受診しても問題ありませんよ。
 ただ他の科では下剤を出されて終わりというケースが多く、根本解決にならないんです。便秘に一番うるさいのは肛門科。将来的に、便秘で悩んでいる人のための「便秘外来」が作れるといいと思っています。

4

女性患者と男性患者の割合

 肛門科のレディースクリニックができて、「病院に行くほどではないけど、悩んでいる」という女性が、前よりも気軽に受診できるようになって来たようです。痔だと思って放置していたら大腸癌だった、ということもあるそうなので、最初に受診する時のハードルが「女医が診るレディースクリニック」により低くなるのはいいことですね。患者さんの男女比は、どのくらいなのでしょう?

松村先生:10〜20年くらい前までは、痔は男性が多いと思われていましたし、実際男性患者の方が多かったんです。私が松島病院で勤め始めた時も、42対58くらいで、男性の方が多かったですね。ところが、私がレディースデイを始めたら、だんだん女性患者数が増えて来ました。松島グループ3病院では、昨年は女性患者が男性患者の1.2〜1.3倍と、男性患者を抜きました。レディースクリニックができて、患者さんが来やすくなったんでしょうね。痔核(いぼ痔)に関しては、患者数は男女ほぼ同数だと思います。裂肛(きれ痔)は女性が多いですね。痔瘻(あな痔)は男性が圧倒的に多いです。男性に痔瘻が多いのは、下痢しやすい人や飲酒する人が多いこと、ストレスで抵抗力が落ちるためと考えられています。

 事務職の女性は、座りっぱなしでパソコンとにらめっこ、ということが多そうですが、これも痔と関係があるのでしょうか?

松村先生:1日中座り仕事をしていておしりがうっ血し、痛みを訴える方は多いです。11時間ハイヒールで立ちっぱなしの飲食店の店員さんとか、水を飲むとトイレに行きたくなるからと、8時間くらい水も飲めずにひどい便秘になってしまうコールセンターの方など、現代の女性の労働環境は過酷だなと思います。仕事の合間に散歩や体操をして、おしりの血行をうながすといいでしょう。

 首都圏ではオフィスにパソコンが普及して、男女関係なく仕事ができるようになりました。昔は男性は外回り、女性は内勤と役割が決まっていましたが、女性のライフスタイルが変わり、性差がだんだんなくなっているようです。座りっぱなしや立ちっぱなし、冷房による冷えなど、女性を取り巻く過酷な労働環境が、痔の誘因となっているのかもしれません。

モンナージュ
5

痔は誰でも持っている?

 痔に関して色々伺って来ましたが、そもそも、なぜ痔は怖いのでしょうか? 痔になって困ることとは、何でしょう?

松村先生:痔で困ることは、まず「出血」ですね。それと、「脱肛してしまい、手で戻す煩わしさ」でしょうか。痔核(いぼ痔)が大きくなることで外の血管も圧迫されて腫れ、内痔核と外痔核がくっついて内外痔核といわれる形になってしまいます。そうすると、痔核が出っぱなしになってしまい、血が入るとふくれて痛みを感じます。また裂肛(きれ痔)の場合は痛みや出血があるので、軽くても来院する人が多いですね。

 なるほど……出血に脱肛に痛みがあれば、治さなければいけませんね。「でも、痔は特殊な病気だし、多分ならないから大丈夫」……などと思っているモンナージュスタッフに、松村先生はきっぱりと断言しました。

松村先生:実は、痔核(いぼ痔)は誰でも持っているんですよ。患者さんは、内痔核が肛門から外に出てはじめて「痔になった」と自覚するのですが、肛門科から言えば、出ていなくても痔は誰にでもあるのです。ただ、人によって程度が違うだけ。だから、痔を育てないように、大事にしていくべきなんです。
 人間は心臓が上でおしりが下の生き物ですよね? 血液は上から下には落ちやすいですが、下から上には上がりにくいもの。体を縦にして生活していると、夜までにどんな人でも内痔核が腫れるんです。夜ベッドに横になると、おしりに集まった血が心臓に戻るため、寝ている間にリセットされます。ただ、それを毎日繰り返していると、粘液や血管はどうしてもゆるんでくる。一生をかけて痔は大きくなっていくのですが、大きくなるスピードは人によって違います。

 ええ〜っ! 私たち、実は全員痔を持っているのですか? 驚きでのけぞっているモンナージュスタッフに、松村先生は続けます。

松村先生:痔は怖いものじゃなくて、付き合うものなんです。そして付き合い方次第で、一生うまくやっていけるんですよ。肛門から3〜4p奥にある内痔核は、脱肛する頃には相当大きくなっています。でも、脱肛していなければ痔があっても困らないし、極端な話、脱肛していても気にしなければ、置いておいても構わないものです。もし大きく腫れて戻らないなどの困ったことがあったら、それに対して治療をすればいい。その時に原因を考え、冷えや食生活、便の硬さなどを一つ一つ解決していくことで、一生付き合っていくのです。たまに暴れ出した時に、早く治めれば軽くて済みますからね。

 「痔は怖いものじゃなくて、付き合うもの」……明言ですね! でも、モンナージュスタッフと同様「自分には肛門科は関係ない」と思っている女性も多いと思います。どういう状態になったら、受診したらいいでしょう?

松村先生:痛みや出血は誰でもあります。最初は市販薬を使って様子をみて、それでも1〜2週間症状が続くようだったら来院して下さい。ただ、痔瘻(あな痔)は日増しに痛くなっていくので、待っていられないでしょうね。

6

痔を悪化させない生活習慣−「おしりにいいことは、アンチエイジングにもいい」

 誰でも持っている「痔」。それを悪化させず、一生うまく付き合っていくには、どうしたらいいのでしょう? その問いかけに、松村先生は「食事」「運動」「温める」という回答を下さいました。これ、何かにもいいような……?

●食事
 不溶性食物繊維の根菜は、腸を動かすためには大切ですね。不溶性の硬い繊維が腸を動かし、水溶性の柔らかい繊維が水を溜める。どちらも必要なのですが、一般的に「繊維」というと、硬いものを思い浮かべる方が多いようです。不溶性と水溶性は7:3の割合で摂った方がいいのですが、不溶性を多く摂る方が多いようですね。
 ヨーグルトやオリゴ糖は、腸の中の善玉菌を増やして体調が良くなりますが、あまり便の硬さとは関係ないでしょう。漬け物などの発酵食品は、日本人にはいいようです。それと、アルコールや香辛料はほどほどに。

●運動
 激しいスポーツをする必要はありませんが、適度に運動して、腸のぜん動運動を活発にするといいでしょう。特に、腹筋運動が効果的ですね。腹筋がないと、いきみがお腹に行ってしまい、おしりに伝わらなくなってしまいます。そういう場合、お腹を押しながらいきむと便が出やすくなります。

●温める
 痔には冷えがよくないので、温めるとすごくいいです。痔になりかけた方はお風呂に入って、寝ていることが一番です(おしりに集まった血が心臓に戻るので)。お風呂に入ると、血流が良くなり、おしりの括約筋がゆるみます。肛門の内側に傷がある裂肛の人は、おしりが締まると痛いのですが、お風呂に入ると締め付けがゆるむため、痛みが取れやすくなるんです。手術後の痛み、痔核が腫れている時の痛みも、お風呂で取れやすくなります。長くゆっくり入れるよう、少しぬるめの温度がいいですね。腰とふくらはぎにカイロを貼るのもいい。おしりに直接貼るのは、やけどするので避けてください。市販のカイロ座布団を使うのもいいでしょう。

 その他、睡眠もとても大事とのこと。これ、まるっきり「アンチエイジングにいい生活習慣」ではありませんか! 松村先生も「おしりにいい生活習慣をしていることが、ひいてはアンチエイジングにも繋がる」とおっしゃいました。逆に、アンチエイジングにいい生活習慣をしていることが、痔を悪化させないことにも繋がるのですね。

モンナージュ
7

理想の便とは?

 痔を悪化させないためには、「いい便」がキーワードのようです。松村先生は「自分の便を観察すること」を勧められます。

松村先生:いい便が出るのは、健康ということです。便を見たことがないという方がいらっしゃいますが、ぜひじっくり見て欲しいですね。どのくらい出たか、色はどうなのか。便の色は、黄色から緑色までは大丈夫です。黒や赤が続くとまずい。コールタールのような真っ黒の便が出たら、それは胃からの出血ですので、その日に病院に行くようにして下さい。

 1日に出る便の量や回数、硬さや太さは、どのくらいが普通でしょう?

松村先生: 1日に出る便の量としては100〜200g、むいたバナナ1本分くらい。もっと出ることもありますけどね。食べたものは大体16時間くらいで便になりますが、人によって12〜72時間と開きがあります。あまり長期間腸内で留まると便が体内で発酵しますが、3日くらいなら大丈夫です。
 あと、宿便信仰はやめてほしいですね。宿便なんて、ないですから。腸洗浄も、絶対止めた方がいいです。
 回数についてですが、便は回数じゃないんです。おしりまで来た便が、楽につるっと出るかどうかが大切なので、1日3回でも3日に1回でも構いません。硬さとしては、練り歯磨きからバナナくらい。便は柔らかいと細くなりますが、硬くても柔らかくても細い便しか出ないと、おしりがそれ以上広がらない「何か」があるということ。ポリープの可能性もありますし、裂肛を繰り返しているせいかもしれないので、要注意です。時々細い便が出る分には、問題ありません。
 太さは男性の親指くらいから500円玉くらいまでが楽だと言われています。ただ、上から押し出す力がないと便は出ないので、ごはんを食べたらお腹が動くという、いい結腸反射を利用すると、とても楽ですよ。

モンナージュ
8

肛門科クリニックでは、何をするの?

 「人におしりを見せるのは恥ずかしい」「痛いことをされるのでは?」という、羞恥心や恐怖から、なかなか肛門科を訪れにくい女性も多いと思います。そんな方のために、モンナージュスタッフが松村先生に、クリニックでは実際にどういうことをするのか、お伺いしてみました。

松村先生:まず問診票を書いてもらい、カルテを作ります。診察室では何が一番気になるのか問診をして、それから診察台に横になってもらい、実際におしりの具合を診ます。視診や触診のほか、直腸鏡や肛門鏡も使います。 初診患者さんで気をつけるのは、症状が本当に痔なのか確かめること。直腸癌などと症状が似ているためです。ただ、痔による出血は出たり止まったりしますが、直腸癌は出血が増えていきます。痔は見逃しても命に別状はありませんが、直腸癌は絶対見逃せないです。
肛門科の専門病院やクリニックなら、一番怖いのは直腸癌であることが分かっているので、直腸癌の可能性も視野に入れながら診ると思います。病院名に「肛門科」をきちんと掲げている病院を目印にすればいいでしょう。

 モンナージュスタッフは、実際に直腸鏡を見せて頂きました。太くて長く、ちょっと怖い感じがしますが、人間の便の太さや、直腸がまっすぐなことを考えると納得が行きます。
 診察の前に準備しておくことはあるでしょうか? 生理の時でも受診して大丈夫なのでしょうか。続けて松村先生にお伺いしました。

松村先生:生理の時でも来院して大丈夫です。おしっこは診察前に済ませておいた方がいいでしょう。「診察前にウォシュレット」などは、あまり気にしなくていいです。スカートをはいていると楽かもしれませんが、診察台に横になったらバスタオルをかけてズボンを下げるので、服装もあまり関係ありません。便秘の方も横になると便意を催さないので、来院して大丈夫ですよ。ただし、下剤は飲まないでください。妊娠初期の方には気を遣いますので、事前にその旨教えて欲しいですね。

モンナージュ
9

死亡率第1位の大腸癌、実は治る病気?

 女性の大腸癌の死亡率が、乳癌を抜いて第1位になりました。それに関して、肛門科専門医である松村先生は、「大腸癌検診を受けて欲しい」と、女性に警鐘を鳴らします。

松村先生:大腸癌は、大腸癌という形で出て来ることがすごく少ないんですよ。最初はポリープができ、ポリープがある程度のサイズになると、中に癌細胞が混じります。そのポリープがもっと大きくなると、全部癌になるんです。ポリープの段階で切除すれば、治るはずの癌なんですよ。なのに女性の死亡率第1位になるということは、それだけ大腸癌検診を受けたくない女性が多いということです。そこの敷居をどう低くするかが、今後の課題と言えるでしょう。
 付き合い方も治し方もいくらでもあるので、むしろ痔なんていいの。痔ではなかった場合が怖いんです。「その症状は本当に痔なんですか?」「痔と決めつけていいんですか?」ということですね。残念ながら、20歳で癌の女性もいらっしゃいます。30代は平気でいくらでもいます。でも、大腸癌は治る病気。乳癌よりよっぽど治る病気なんですよ。

 「大腸癌検診って、何をやるんだろう」という怖さと羞恥心が、女性の足を遠ざけているようです。でも、治せるものなのに検診を受けずに悪化させて治せなくなってしまうのは、あまりにもったいないですよね。検診では、どのようなことをするのでしょう?

松村先生:大腸癌検診は、まず便潜血検査(検便の一種)をします。最近は大分精度が良くなって、ポリープ段階で取れるものが見付かることもたくさんあります。ただ、目に見える出血がある場合は、便潜血検査をやっても意味がありません。その場合は次の段階で、ちゃんと腸の検査を考えなければなりません。
 その際はカメラ(大腸内視鏡)が最も検査の精度が高いです。おしりからカメラを入れて腸の中を見るのですが、痛み止めの注射を使うので、検査は全然苦しくないんですよ。寝ているうちに終わります。

 痛くないのなら、受けてみようと思う女性も増えるかもしれませんね。何歳頃から大腸癌検診を受けた方がいいのでしょうか。

松村先生:30代なら便潜血検査でもいいと思いますが、40代なら大腸癌検診は絶対受けておいた方がいいです。CTなどでは小さいポリープは分かりません。1cm以内のポリープの段階で切除すれば癌にはなりませんから、検診ではそういう小さなポリープを発見したいんです。
 むしろ痔や便秘をきっかけに、大腸癌の検診を受けて欲しいですね。治るはずの大腸癌が、女性の死因のトップなのはおかしいことです。痔は治るものなので、出血が続くようなら腸のポリープや疾患を疑った方がいいですね。

 松村先生のお話、いかがでしたか? 「痔は誰でも持っている」「おしりにいいことは、アンチエイジングにもいい」など、目から鱗の名言がたくさんありましたね。痔は誰にでもあり、むしろ女性の方が多いと伺うと、ホッとして肛門科への抵抗が薄れるのではないでしょうか。
 それでも肛門科の受診をためらう方は、レディースクリニックならハードルが低くるはず。陰に大腸癌や直腸癌が潜んでいることもある肛門疾患、異常を感じたら軽視せずに、肛門科のドアを叩いてみて下さい。もちろん、日頃からおしりにいい生活習慣を心がけることも忘れずに!

 取材にご協力いただいだきました
らら女性総合クリニック 松村圭子先生と一緒に。松村先生の手には松田聖子さんのブロマイドが。彼女の健康や美容へのプロ意識に共感しているとか。きっと子宮ガン検診も定期的に受けているに違いない。らら女性総合クリニック 松村圭子先生と一緒に。松村先生の手には松田聖子さんのブロマイドが。彼女の健康や美容へのプロ意識に共感しているとか。きっと子宮ガン検診も定期的に受けているに違いない。

松島ランドマーククリニック

横浜市西区みなとみらい2-2-1-1 ランドマークタワー7F
予約専用ダイヤル 045-222-5560〈完全予約制〉
予約受付時間 10:00 〜 16:00
月曜〜土曜/9:00〜11:30、13:00〜15:00
ホームページ >>

松村奈緒美先生のブログ「おしりだって風邪をひく」
URL:http://ameblo.jp/proctnao/

▲ページのトップに戻る
 
 
 
  サイトマッププライバシー・ポリシーサイトのご利用に際して