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話に興味津々の様子 |
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「江戸時代までは東洋医学がメインでした。明治で医制になってしまって一気に西洋医学に変わり、東洋医学は駄目だということになった。そんなこんなで日本における東洋医学ってちょっとヘンなんですよ。鍼灸と漢方は本来セットなんですね。でも日本では漢方をいじれるのは、何と漢方専門ではない西洋医学のお医者さんだったりするんです。薬という枠があるんですね。鍼灸師がいくら勉強していても、お医者さん以外の人が出すと医師法違反・・・。もちろん規制緩和で、薬剤師さんが出したりしていますが、まだ漢方薬の勉強してますから、ね。」
では、世界的に見た場合はどうなんでしょうか?
- 「世界的に見ますと、鍼灸というのは漢方薬と一緒に扱うもので、つまり東洋医学ですよね、中国の東洋医学のお医者さんは漢方薬・鍼灸・スイナ(マッサージ)・気功の4つをマスターし、医療従事しています。患者さんへの治療法は、これらを症状に合わせながら組み合わせる。全体像をみていくので総合的です。しかしながら中国は今、西洋医学が流行中。医療費が高価なので、お金持ちの人達がそちらへ向かい、東洋医学は安いからか、こっちにしかかかれない人が多いというお国事情もあるようですが。」
「一方、韓国では6年間、東洋医学を学びますが大学は11校しかないので、入るのもそりゃあ大変です。西洋医学と東洋医学のお医者様は収入も地位も一緒ですから、東洋医学のお医者さんがお嫁さんにいきたい職業に選ばれたこともあります。しっかりと韓医学(もともとルーツは中国から)が根付いています。西洋医学のお医者さんは漢方は使えないのも徹底しています。」
「アメリカは州によって違いますが、鍼灸と漢方薬(ハーバルメディスン)は一緒になっていますね。」
確かに、ルーツは一緒でも日本とはかなり状況が違う。
- 「本来は”全てを治す”という面がありますから、漢方薬は飲んで内から治す、鍼灸は外からのアプローチ、マッサージは表面的なもの、鍼は表面だけれど少し中まで入るのでマッサージとは段階的な違いがある。これらをそれぞれ人の症状に合わせて、バランスよく組み合わせていくのが東洋医学の考え方。日本は鍼灸と漢方はバラバラで、マッサージもどれが本来の東洋医学発のものかが、今はわかりずらいかもしれないですね。」
鍼はどんな鍼を使って、どう使うのですか?
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リュウ君も話に聞き入って |
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- 「そもそも鍼のイメージがマイナスかもしれませんが、鍼は日本と韓国がすごく似ています。細い鍼や管のようなチューブなんかを使いますね。なんと注射針の中の空洞に入ってしまうくらい実は細い鍼で、よくしなります。私がよく使う0.16ミリタイプだと、針の穴にも入ってしまうくらいに細いですから、上手くうてば、痛くない。でもこればっかりは練習が必要ですけれど(笑)。又お灸を肌に直接すえることもしますが、中国では直接やりません。さらに中国の鍼は太いので、中国の若者達などは痛くて怖い!と鍼を受けたことが無い人が多いようです。」
「鍼をうつ場所は症状によって本当に様々です。整形外科的、内科的、急性、慢性的...と。経絡上でどこにうつか、また筋肉にうつ場合もありますから、深さもそれぞれ違う。緊張を緩めたりする時もあれば、反対の時もあるので・・・、一概には言えないです。そこがまた良いところなんですが。例えば腰の調子を見たとします。その時に、直接、腰周りをやるのか、また関連している離れたところでより効果的な場所を探すのかは、症状の重さの違いで選んだりするのですよ。また、急性の激しい痛みは比較的簡単です。逆に慢性のほうがいろいろ問題がからむので、少し大変で時間がかかります。生活習慣病などもあったりするのでね。効果的なところと言えば、うつ病や不妊症などにも結構いいんですよ。」
出てきましたね、整形外科系以外でのお得意分野が。
- 「以前、サンフランシスコの某大学で、AIDSを東洋医学でどう治療するかという臨床実習の学生の面倒を見ていた頃、AIDSは免疫不全の症状なのですけど、それらが改善される結果が出ていました。AIDSは完治しないですが、いろいろな症状が化改善するんです。結局、免疫力をUPする鍼灸の効果だったんでしょう。アメリカはで腰痛とか膝の痛みなどの整形外科系より内科的疾患をどうするか、というほうが多い。あとは薬物中毒を治すとか、逆子を治す、なんていうのもありました。NIH(国立衛生研究所)の評価で鍼が何故効くかわからないが確実に効き目はあるだろうということで、アメリカらしい結論でしたね。」
「日本では先ほどのうつ病や不妊症の方をはじめ、不眠症の人などにも効果的です。薬の多用者が、飲まなくてもいい程、改善されているケースもありますし。あとは手術後に出るいろんな痛みの緩和に対応したり、人工透析の後の痛みやかゆみにもいいので、鍼灸を入れている病院もあります。もちろん整形外科内もありますが、限られた症状でしか使われていないのがとても残念です。日本でもっともっと多種にわたって広がって欲しいなと思います。」
そもそも西洋医学と東洋医学、分ける必要ってあるんでしょうか?
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お二人の島田先生と話が弾む |
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- 「我々は東洋医学のほうにいるので、何とも言えませんが実のところ、両方ココロも身体も元気な人がいいのは決まっているし、本当は鍼灸にかからない人をつくりたいんです(笑)。もしかしたら病院の重い雰囲気や緊張感に包まれているよりエステや温泉に行ったほうがいいという場合だってあるかも。あとやはり歴史的な背景はありますが、内科的疾患が鍼灸の得意分野だという認識が、正直、日本では薄いのではないでしょうか。ここが広まれば楽になる人達も沢山出てくるような気がします。」
花粉症が鍼治療で薬入らずになった自分としては反省しきり。でも、漢方も含めて時間がかかるイメージがあるのでは?
- 「ものや症状によります。例えば、初期の風邪ならば鍼灸&漢方薬で一晩で治す、みたいな感覚があります。風邪もレベルが細かに分かれていて、それぞれに違う処方です。漢方すべて時間がかかるというのは勝手な思い込み。症状と薬がピタリと合えば割とすぐ治せるし、急になったものもそうで、慢性的なものは確かに時間はかかることが多いかもしれません。内臓的にではなくて体質改善とかが目的の方が多いので、結局、時間のかかるものを鍼灸や漢方などで治している人が多く、そう思う人が増えたのではないかと思います。もっと幅広くて気軽に使えるものなんですが。」
では、西洋医学と東洋医学の融合も可能?
- 「ある方がとても面白いことを言っていたんですが、西洋の医学はゼロまで、つまりマイナスをゼロまで持っていける。その点、東洋医学はプラスがある。というのは、すっきりした、とか気持ちよかったと思えるから、実はそれがすごく大事だったりする、と。本当にその通りだと思いました。」
「法律上、日本では西洋医学のお医者様が漢方の処方を出す事になっていますので、専門ではないゆえに大変なこともあるかと思います。たまにとんでもない処方を見たりもしますが(苦笑)。そういえば、過去に漢方薬の副作用が問題にされた報道がありまして、実は漢方薬の副作用ではなく、処方の見立てが間違っていたということもありました。実際、漢方薬を出す時には、まず問診そして舌、触、脈診で、そして体に触れながら総合的な診方をするものですが、そのバランス、つまり陰陽のバランスまではなかなか専門じゃあないと難しい。症状だけは見ていたと思うんですけれど、ね。」
「今の若いお医者さん達の時代、浅くではありますが東洋医学がカリキュラムに入っていますし、薬科大学も科目にあります。お医者さんになるには、本当に膨大な勉強をして覚える事も山ほどありますよね。研修医になったらなったで、お休みでも電話が鳴りっ放しで、お休みなしの状態も日常茶飯事。そんな西洋医学の世界、検査を繰り返して数字を出して行くのが一般的な流れ、それがないと先に進めない、また専門がより高度になってきているなどの点で、患者さんの身体を総合的に診づらい傾向はあるかと思います。逆に、そういう面で、東洋医学は、全体でみていくのが基本ですから、診方が違う点で、大きなメリットがあるのではないかと。」
「東洋医学では、ココロは心(シン=心臓)にあるといいます。脳ではない。また精神的な症状を良くするには、神経にうつわけではなくて、問診して顔色、目の輝き、舌を診たり、触ったりして東洋医学的なバランスをとっていくと、徐々に治っていくということなんです。」
「今後は在宅介護も含め、医療費の負担なども考えると東洋医学的発想や、医療現場での活躍が期待できますよ。アメリカなどは保険の形が日本と違い、保険会社が症状によって西洋医学と東洋医学の費用対効果の比較して患者さんに鍼灸を進めたりするケースも多々あります。」
鍼灸の良さ・魅力というのは?
- 「そうですね、例えば慢性の腰痛を抱えている場合、腰だけでは無理なんですね。他の経絡をいろいろと組み合わせてケアする。体は繋がっていますから、体全体として診れるところに、素晴らしさがあると思います。また、人間の体にとって一番は、"食べれました・眠れました・出ました!"なんですね。それはバランスが大事。バランス調整こそ鍼灸の強みかと思います。あとは、足腰が温まっているのがとても大事です。これは主に灸の出番になりますが、鍼の先に灸をすえて腰を温めると、骨盤が温まり、足までポカポカしてきますから。冷えは万病のもと!と言います。気をつけたいものです。
それから鍼灸の良さというのは、1時間強べったりくっついてゆっくりじっくりジワジワとお話が聞けるというところかも。全身を診ながら、コミュニケーションがとれるのがいいです。」
もちろんお互い相性もあると思うのですが、先生のファンになってしまえば、治療の前に治ってしまうこともあるかも?!そうなれば、きっと本物ですね!
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和やかな会話が続きます |
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- 「話し合うというのは人間の本質にあるものですが、
それが人間同士の接点が薄くなりがちな今、孤独感や焦燥感となっていろいろなものを
生んでいるのかもしれません。」
バランス、コミュニケーション・・・いろいろ出てきましたがどんな方が注意すればいいのでしょうか?
- 「社交的な人でも、ある時にポキっと折れる時があります。人間的にしなれない人は、折れやすいんですね・・・
自分を責めがちだったり、責任感が強すぎると精神的に頑張りすぎてしまい、
肩甲骨の間がバリバリに凝っていたり、のどが詰まっている人がすごく多いのです。」
言いたいことが言えない人が多い?!
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どこまでも穏やかな先生です |
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- 「そうですね。のどの閉塞感を訴える人は、うつ病に多いんですが、梅核気(ばいかくき)といいます。治療前にゴルフボール位に感じていたのが治療後に飴玉くらいに小さくなって帰られた方もいらっしゃいましたよ。」
鍼灸は性格も変えられる?!
- 「体が楽になって巡りが良くなり、いい状態になれば良い性格になるのでは?
性格の前に、表情は確実に、あと眼の輝きが変わりますよね。
体がひずむとイライラしたり、ね、キツイ言葉を発したりするじゃあないですか。
そんなのが無くなれば、楽になりますからね。」
さて、鍼灸はどこで受けるのがいいのでしょうか?
- 「難しいですね(苦笑)直接、ここかな?と思うところでやってもらうことでしょうか・・・。実は日本の鍼灸は流派がいろいろあったりするので、どこがいいとは一概にはいえませんし、先生と患者さんの相性もありますしね。鍼をうつ本数が流派によって違ったり、多くうつのが好きな先生、もしくは患者さん、鍼の刺激が弱いほうがいい方もいますが、逆に強くないとうった気がしないということで強い鍼を好む方など、もういろいろなんです。また全国で25校だった鍼灸学校も今や、新規参入の新設で100ほどはあります。卒業生のレベルも下がりますよね。何しろ、患者さんとの関係性が大事だし、エビエンスの世界ではないので、非常に客観的な判断が難しいこともあるのは事実ですから、合う先生を探す位の心意気で。余談ですが、獣医さんや、歯医者さんなどで鍼を使って治療する人も出てきています。もっとも、動物には獣医さんしかうてませんが。」
鍼灸に加えて、気をつけることはありますか?
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(上)いざ出陣?!
(下)リュウ君も見守っててね♪ |
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- 「適度な運動は効果的です。決して激しくなくていい。過激な運動は逆にNGです。
また東洋医学では水分のとりすぎは厳禁。冷たすぎる水や必要以上の水はとらない事です。
なぜなら余分な水分は体の下にたまりやすくなり、冷える元になるからです。
水の代謝に関わるのは肺で、肺が全身に行き渡らせてくれます。面白いでしょう?」
「毎日の食事も当然、大事。食べ物が体をつくります。その土地のものをその土地の人が食べるのが一番です。特に春は肝が病みやすいので、対応策としては、すっぱいものをとると良いですよ。肝が滞ると、すくすくとまっすぐにのびやかに行かず、気の流れが停滞しやすくなります。イライラや目の疲れ、爪に影響が出ます。生活や食事の中での小さなサインを見逃さないで。サインもいろいろで、重だるいと、どんよりとするのとではSOSサインの出所が違いますからね。」
一通り、お話を伺って、鍼に対する先入観もうっすら消えたので、今日の症状を診て頂きながら、鍼をうってもらう事に・・・。
- 力「患者さんとはまず、しばらく問診を。こちらから東洋医学的な質問をすることもあります。例えば・・・夢を見るか? 好きな味は何か?など、西洋医学では聞かれませんよね。それから症状を聞きます。症状を聞くことで、どこに問題があるのかを全体像に照らし合わせていろいろと探るのです。そして触診です。顔(肌)色→脈→舌→眼→お腹全部→手足→腰・・・ それから治療に入ります。手足の重要なツボを診て 鍼、必要があればお灸を足します。お腹をゆるめる、そして首、背中、腰、座って首と肩にいき、最後には養生のことなどをお話してお茶を飲みます。」
私の場合、症状として・・・
□ イライラ
□ 目の疲れ
□ 手足が冷たい 冷えている
ということで、圧倒的に"肝(かん)"が弱り気味の模様。
春なので、順当なところか?!
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