運動をすると、フリーラジカルに対抗する酵素活性が上がり、サビ止め機能がアップします。運動には、大きく分けて下記の3種類があります。
1.有酸素運動
2.筋力トレーニング
3.ストレッチ
この3つをバランスよく組み合わせて行なうと、体のサビ止めになります。中でも、まずやっていただきたい運動が「有酸素運動」です。有酸素運動とは、酸素を「たくさん」取り込みながら行なうトレーニングのこと。エアロビクスやジョギング、ウォーキング、スイミングなどが挙げられます。有酸素運動には持久力系の筋肉や「遅筋」を鍛えるほか、心肺機能のアップ、ストレスのコントロールなど、さまざまな効果があります。
定期的にスポーツジムに通って有酸素運動をするのが理想的ですが、忙しくて通えないという方も多いでしょう。でも、運動は続けないと意味がありません。長く続けることで効果があらわれますし、その効果は長期間「貯金」できないのです。
運動を長く続けるためには、やはり日常生活の中で行うことが大切。となると、やはり歩くこと、ウォーキングが手っ取り早く、長続きする運動といえるでしょう。
近年、1日にかなりの距離を歩く農業・漁業の従事者が平均寿命を急激に伸ばしています。また、ゴルフ場のキャディーさんも長寿では定評があります。一見メタボリック体型でも、血圧や血糖値、コレステロール値が正常で、健康状態が良好なキャディーさんが多いのです。キャディーさんは毎日かなりの距離を歩くため、きちんと抗酸化ができているからです。
健康維持を意識するゴルファーの方は、電動カートに乗らずに歩いてラウンドするようにしてください。私もゴルフをしますが、1ラウンドで2万歩ほど歩いています。
理想的なのは、1日8000〜1万歩のウォーキングを週に3、4回行うこと。それを実行し続けると80歳になっても認知機能が高い(ボケない)ことがわかっています。
喫煙者はそれだけで健康維持の上でのハンディを負っています。ぜひ有酸素運動をしてサビ止め能力を上げてください。すぐに息切れするようでしたらタバコの本数を減らすか、禁煙するべきでしょう。
ウォーキングが大切だとわかっていても、なかなか実行に移せなかったり、すぐに挫折してしまったり、という方は多いのでは。そんな方は、まず自分の現状を知ることから始めてはいかがでしょう。病気になる前にできるだけ早い段階で自分の現状を知り、危機感を持って欲しいものです。
そこでお勧めするのが万歩計をもつこと。最初は目標を設定せずに、ただ万歩計をもつだけでいいのです。自分が1日にどれだけ歩いているか把握することから始めましょう。
毎日電車で通勤し、家から駅までと、駅から会社まで、それぞれ5分以上歩いている人は往復で20分間歩くことになりますから、あまり心配ないでしょう。同様に1日に何度も1階と2階を行き来している主婦の方や、歩いて買い物に行く方も、それなりに歩いていると思います。
心配なのは、すぐにバスやタクシーに乗る会社勤務の方や、必ず自転車や車で外出する方。そんな方が万歩計をもつと自分の1日の歩数を見て「これだけ!?」と驚くかもしれません。中には1日2000歩、3000歩という人もいるはず。どうでしょう、危機感が湧くのではないでしょうか。そのまま放置したら体がサビる一方だとわかれば「何か運動を始めないと、本当にまずい」と奮起するはずです。
私の患者さんのTさんが60歳だった頃の話です。若い頃は登山をしていたのに、40代になって仕事が忙しくなるとほとんど運動をしなくなりました。それでもTさんは自分の体力に自信があったのです。
ところが、60歳を機にアンチエイジングドックを受診してみると意外なことがわかりました。「筋年齢」「血管年齢」「骨年齢」「ホルモン年齢」「神経年齢」という、老化度を知るための5つの尺度のうち、ほかの年齢は50歳と判定されたのに、骨年齢だけは65歳と判定され、実年齢以上に老化していたのです。判定を見たTさんは「どうすれば骨年齢を改善できますか?」と、骨を若返らせることに意欲を燃やしました。
そこで私は、まず栄養面で、カルシウムやマグネシウム、ミネラルを含んだものを食べ、ビタミンD、B、C、E、Kなどをサプリメントで補うようにすすめました。また、骨に刺激を与える運動も不可欠という話もしました。
以来、Tさんは対策を開始し運動には特に注力しました。1日8000〜1万歩のウォーキングを週に4回、筋力トレーニングを週に2、3度行ううちに、徐々に若い頃の体を動かす快感が蘇ったそうです。やがて運動は習慣化し、骨密度もじわじわ上昇していきました。食事の栄養バランスにも気を配った結果、2年後には骨が強化されただけでなく、男性ホルモンであるテストステロンの値が、以前の300から500μg/dl以上に上昇。ホルモンバランスも非常によくなったのです。
Tさんの場合「負けん気」が運動再開の契機になりました。体力に自信がある方はTさんのように若々しい体を保ちたい気持ちが人一倍強いはず。そんな方も、まずは自分の現状を知り、自分に刺激を与えることが先決ではないでしょうか。