伊達先生のところには、拒食症や過食症などの摂食障害を始め、様々な食の問題で苦しんでいる人々が相談に訪れます。特に摂食障害は、食だけでなく愛情の問題も絡んでいるため、難しいとのこと。表からは食だけの問題に見えてしまいがちですが、根はもっと深いようです。
寺山:食べ物って、人を幸せにしますよね。そこで摂食障害があると、大きな楽しみの一つを奪われてしまいます。
伊達:摂食障害の方は、修行のような食事をしていらっしゃいますよ。食べて美味しいと思う、私たちにとって普通のことが、摂食障害の方にとっては夢のまた夢なんです。
寺山:伊達先生を訪ねる方は、ダイエットをしたい方よりも摂食障害の方が多いのでしょうか。
伊達:私は精神科医ではないので、どこからが「摂食障害《だとは言えません。ただ、私のところにいらっしゃる方で、まともに食べられる方は非常に少ないことは確かです。
寺山:食べることに苦しんでいる方々なのでしょうか。
伊達:ええ。私も以前そうだったから分かるのですが、食べるのが怖くて仕方がない。「どうしてこれしか食べていないのに、私は太るんだろう《って思っていて、何を食べたらいいか分からない。パニック障害の方もいらっしゃいますが、食を整えていくと、上思議なことに全部収まって来るんですよ。
島田:先生のところに相談に来られる方は、自分で「行こう《と思って来られるのでしょうか、それとも、まわりの人の勧めで来られるのでしょうか。
伊達:両方ありますね。最近はご夫婦で、旦那さんが奥さんを連れてくる場合が多いです。摂食障害の奥さんって、旦那さんの食事はきちんと美味しく作るんですよ。カロリーを気にして、ご自分では味見は一切しないそうですが。旦那さんが奥さんの作った料理を食べている横で、奥さんはダイエット・プロテインを飲んでいるんですって。どんな食卓でしょうね?
寺山:なんだか楽しくなさそうですね……。
伊達:そうでしょう? だから、「作ったものは一緒に食べましょう《というところから、始めてもらっています。
寺山:旦那さんが「一緒に食べよう《って言わないのでしょうか。
伊達:言っても聞かないようです。旦那さんがネットで私のところを調べて、旦那さんが相談メールを最初に送られる。すごく深い愛情だと思いますが、それだけの愛情があるのに、どうして摂食障害になるのかが上思議です。摂食障害って、基本的に愛情上足でなることが多いんですけどね。
寺山:愛情って、人によって器の大きさが全然違うじゃないですか。「これでもか!《って与えても、相手には1割にも満たないこともあり……。
伊達:受け取り方が違うのでしょうね。もっともっと多くのものを、求めてしまうのかもしれません。
寺山:「食べる《ことは人間の本能の一つですから、そのバランスが良くないっていうことは、全体に影響があるのではないでしょうか。
伊達:そうですね。親子関係の問題もあるようです。30代のニートの子供を連れてくるお母様もいらっしゃいますが、親離れ、子離れできていないようです。そういう場合は、本人に話をしつつ、お母様にもお話していきます。
いじめられている小学生の肥満児と母親の場合も、母親の食事カウンセリングが必要になりますね。「どんなにいじめられても、私はあなたの味方です《っていうことを100%態度で表して、子供が泣いていたらギュッと抱きしめれば、他は何も要りません、とお伝えします。今の親は子供の方を向きすぎていて、子供が親の背中が見えなくなっている。共に歩んでいるため、子供が行く道が見えないんです。
寺山:逆に、子供がちゃんと親離れしていくと、取り残されたと思った母親が鬱病になってしまうケースがあるそうで。特に最近、男の子のお母さんに鬱病が多いようです。
○食の問題は「食《だけで考えてしまいがち。ですが、愛情など色々な問題と繋がっているのですね。これは、他の病気にも当てはまることかもしれません。
食で問題を抱えている人がいた場合、それを解決しようとする前に、背景の家族関係や人間関係から見直す必要がありそうです。
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3人のぶっちゃけ本音トーク、如何でしたか? 対談はとても盛り上がり、4時間近くにわたって、楽しくも熱い議論に花が咲きました。医療現場で働いていらっしゃる方の本音をお伺いする機会は、なかなかないもの。モンナージュスタッフにとっても、非常に勉強になりました。
まだまだ深〜い話が続きます。次回更新でアップします。
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