モンナージュ:岸さんが提唱している「ホリスティックビューティ」とは、簡単に言うとどんな考え方なのですか?
岸紅子さん:「人の美しさ」を考えたとき、〈姿〉〈体〉〈心〉の3つが、無理なくバランスされていることだと考えます。これがホリスティックビューティの大きな概念です。健康だと美しい…というのは姿と体がつながっているということですよね。そして心と体がつながっているというのも事実。ただ、心は科学的な記号に置き換えられないので、体と心のつながりって説明しにくいんです。難しい。個人個人の感性にも関わる部分でもあります。でも昔の人は、心と体がつながっていることはわかっていました。自分の持っている感覚を信じて検証してきたからこそ、漢方などの経験医療が発達したのです。科学的な証明や理論づけができることが優先されがちな今ですが、この部分もとても大事だと思うのです。
モンナージュ:「病は気から」と言いますが、モンナージュ世代だと、まさにそうだと思う経験をひとつやふたつしてますよね。
岸紅子さん:そうですよね。心と体が密接につながっていることは、みな自分の中で感覚として十分わかっているはずです。
モンナージュ:〈姿〉〈体〉〈心〉がつながっているか…。
岸紅子さん:その人が魅力的かどうかが重要なんです。姿だけでも体だけでもダメ。体がキレイ、顔がキレイ、手もキレイ、ではそれだけでその人が素晴らしいかといったらそうじゃない。豊かな表情だったり、気持ちがあってこそ、その人が魅力的に見えるんです。
モンナージュ:ついつい〈姿〉〈体〉を優先して考えがちですが、〈心〉がないと、前の2つだって素敵に映えないということですね。
岸紅子さん:たとえば、おなじ年齢の人でも、老けている人と若々しく見える人がいます。二人に流れている時間は24時間365日で同じなのに、どこで差が出るかといえば、それは「生活の質」や「気持ちの持ち方」の違いなんです。それが小さな差でも、毎日の積み重ねが人生になるわけですから、差が大きくなって、こういった違いとなって現れるんです。これはしっかり出ますよ。
モンナージュ:その「違い」って何なのでしょう?
岸紅子さん:若々しく見える人と会話をするとわかるのですが、知的好奇心を持っている人がとても多いです。好きなことに積極的な姿勢が持てたり、労を惜しまないんです。そして自分の気持ちや、どう感じるかをすごく大事にしていて、自分に正直。こういった、自分の気持ちを楽しくアップさせる方法を知っているか・知らないかが、差につながってくるのです。輝いて見える。年齢不詳なタイプの人ってこの傾向がとても強いです。
モンナージュ:ホリスティックビューティを実践しようとしたとき、必要なのはこの部分ですね。
岸紅子さん:もちろん、体や洋服のセンスを磨くのも大切ですが、それと同じぐらい気持ちを磨くことも大切です。自分の興味の広がりのツボを知るというのか、自分が持つ軸が見えれば、人生にいろんなバリエーションが作れて、それが豊かな表情や心を生んでくれるはずです。
モンナージュ:自分を見つめるのって、実は大変な作業ですよね。
岸紅子さん:そう、正直いって楽なことではありませんよね。でもそこで考えすぎてストレスになるのはおかしな話。自分を少し客観的に見るようにするだけでも意義があると思います。「私はこれが好き、これは嫌い」「これに興味がある」といったことを自覚していれば、自分の興味だって広げやすくなります。面白いこともきちんと探せる。こういった心の遊びが大切なんですよね。
ビューティが持っている力ってすごいんです。嬉しさ、喜びに関わるすべてを底上げするスイッチがいっぱいあるんです。何かのきっかけで気持ちが明るくなって「外にでも出ようかな」という気分になって〈心〉、じゃあこれ着ちゃおっかな、で〈姿〉、気分よく歩いていて「ウォーキングしちゃおっかな」となれば〈体〉が変わってくる。少々単純な例ですが、この流れってとても楽しいことなんです。
モンナージュ:わかる!自分だけの楽しみかもしれないけれど充実感が得られたりします。最後に、モンナージュの読者にメッセージをいただけませんか?
岸紅子さん:今の女性は、たくさんの選択肢があります。どんどん選んでいけるけれど、それゆえ迷っちゃうこともあるんですよね。心の苦労だって当然ある。その苦労を負のスパイラルにするのではなくって、素敵に変化させて欲しいと思います。そのためには、自分の気持ちをキープするような、楽しいと思えるとこ、気持ちいいと思えることを毎日続けてもらいたいです。先ほども言いましたが、毎日の積み重ねなんです。積み重ねって怖い気もするけれど、とても意味のあるものです。
モンナージュ:すごく奥深いお話です。ありがとうございました。 |