コロコロと食べ物のように可愛らしい石鹸たち。これが泡立ちの良い、しっかりとした洗浄力のある頼もしいスキンケアなのだ。
以前取材させてもらった鈴木小夜子さんが独立し、会社を設立された。コスメ・エステ・フードと「健康と美」に関連する業界を歩き続け、そのキャリアから確固たる哲学をお持ちの鈴木さんは、そんじょそこらの製品は扱わない。
自然農法から生まれたハーブ、自然林の植物のエキス、それらを原料にした製品群...現在は手作り石鹸をメインにされている様子。先日、鈴木さんが扱う製品を作っている製造者を招いてのセミナーがあった。これが非常に面白かったのである。畑、原料、製品に至るまでポリシーを貫く製造者の方のお話にも興味津々ながら、鈴木さんの目利きっぷりにも驚きを隠せなかった。さて、そのレポートを。
「情熱大陸」とかで、是非とも取り上げて欲しい人の一人。
山形県は新庄市。美しい自然が残る風の町、狩川地区の最上川河川敷に、広々とした約5万平方メートルの無農薬・無化学肥料栽培ハーブ畑、日本のハーブ研究先駆けの一人、山澤清さんが完全循環型農法を実践している畑がある。この山澤清さんが、鈴木さんの会社「サスコット」の製品作りを担っている人物。
【水を一滴も使わない 天然成分だけのスキンケア】
アトピーや肌荒れで悩む、女性の話を聞くことが多かった山澤さん。
ハーブマイスターの称号を持つ彼は、妥協しないで本当にいいものを作ろうと、世界中に生育するハーブを、過酷な環境を有する庄内平野にハーブ園を開墾し育て、「ハーブ研究所スパール」を立ち上げ、堆肥まで自ら作る完全無農薬のオーガニックに取り組んで、完全無農薬の循環型農法を確立し、さまざまなハーブ製品を手がけてきたという。
ローズマリー、ラベンダー、セージ、フェンネル、カモミール・・・。日本では、まだ種の入手も難しかった30年ほど前に、長年携わってきた農産物指導のエンジニアからモノづくりの世界に転身したのだとか。
生き物が生息できるきれいな水、健康な土壌、そして安全な堆肥。先にも挙げた、徹底した循環型農法による自然環境を考えた、地道なモノづくりが山澤さんの無農薬ハーブ栽培の原点。
一度も農薬を使っていない畑。化学合成肥料を一切使わない、こだわり。
一言で言ってしまうのがおこがましいほど、難作業の連続だと思うのだが、そこで無農薬・無化学肥料栽培したハーブなど厳選した原料を使った、素肌と自然に負荷をかけない製品達が、結局は人に優しく地球にも優しいのだということを教えてくれる。
「特に、次世代を担う子供達や、お腹に赤ちゃんがいるお母さんに使って欲しい。」と、山澤さんは言う。「未来の子供たちに、負の遺産を残さないために、安心できるものを作っていきたい。」という熱い想い。その情熱たるや、本当にすごい。
天然の植物成分だけ、水もアルコールも使わない、ごまかしや水増しもない化粧品。さまざまな試行錯誤の末に「白樺の樹液」や「へちま水」をベースに手間ひまのかかった大切なハーブ達を加えて製品を作り続けている。そう、白樺もへちまも何も新しい発見ではなく、人間が数百年使い続けた自然の恵み。昔の人が、昔から普通に使っていた素材。
では、その素材をどうやって育てて収穫しているか。
1.自然のままに残されていた原野を、その原風景を残しながら、人の手で開拓された無農薬・無化学肥料農法の畑で、夏に収穫されたハーブを使う。有機農法の畑より、さらに手間がかかり、維持が大変な農法によってこの畑で作られた唯一無二のハーブ。野生の力強さを感じずにはいられない。
2.北海道の天然林に自生する白樺の樹液。白樺樹液には、良質な多糖体とミネラル成分が豊富に含まれる。樹液とは、白樺が芽吹きのために備え、蓄えたエネルギー源。この白樺樹液は早春の1ヶ月間でしか採取できない。木を枯らさないようにと、少しずつ採取されているそう。西洋では「森の看護婦」、といわれるほど生命力溢れる成分だ。
3.庄内地方の自然林(どんぐりなどの広葉樹林)の間伐材を薪ストーブで灰にして、その灰から作った灰汁。その上澄みだけを丁寧にとっている。
いずれも、大いなる自然の営みからいただけた贈り物。その希少で貴重な贈り物を大切に扱い、丁寧に心をこめて作る、全て手作りの石鹸、化粧水、クリーム、オイル・・・・すっかり寒くなって、乾燥が気になり出す時期でも、これならば、健常肌に導いてくれそうだ。
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