寺山編集長(以下寺山):フランスで暮らし日本と行き来している麻奈先生から見て、日本とフランスではアンチエイジングに関してどんな違いがありますか?
岩本麻奈先生(以下岩本):ずいぶんと違いますね。価値観や状況が大きく異なっています。
寺山:たとえばどんなふうに?
岩本:こちらは経済格差もあって、日本ほど美容やアンチエイジング商品の市場は大きくありません。それよりも、非常に小さいときから教え込まれている家族代々に伝わる美意識がきっちりあって、その中にアンチエイジングも含まれているんです。そういった強い背景があるので、最新情報に踊らされることがとても少ないように感じます。もちろん、ハリウッド好きなマダムはいるし、ホルモン注射を打ったりして、日本以上にお金をかけている人はいますけどね。
寺山:アンチエイジングなスタイルが、すでに毎日の生活の中で実践されているんですね。
岩本:そうなんです。スタンスに関しても、ちょっと面白い傾向がありますよ。例えば、日本だと思い立ってからすぐホルモン注射を打つように見受けられるのですが、フランス女性はそこまで行くのに時間がかかります。他の方法はないか考えながら行き着く感覚で、考えている間にどうでもよくなってしまったり、それよりも大事なことを見つけたりします。一部の人を除いて大きな金額をパッと使う習慣があまりないし、お金があっても施術にストレートには行かないのです。日本とは何かが違う。歴史や文化からくるものなんでしょうね。
寺山:日本人のほうが、即物的な考え方をしがちなのかしら...。
岩本:そうした一面もあるかもしれませんね。フランスには見た目だけ若作りしているのではなく、年相応だけれどとっても魅力的なマダムという見本がしっかりあることも、土壌の違いかもしれません。こういった見本となる女性が、日本では身近にいないのかも知れませんね。あと、そのほかの大きい要因として、ズバリ、男性の女性に対する価値観の違い、というものがあると感じています。
寺山:あ、その感覚は私も共感しますね。以前、外資系化粧品会社にいたのですが、その時にも男性が女性に求めるものがまったく日本と違うことは、実感していました。
岩本:日本だと「頭がなくても、若ければいい」という風潮があるけれど、フランスは全く逆。ただ若いということよりも、会話がしっかりできるインテリジェンスやセンスを持っていることが女性としての魅力の大きな要素。いろんな感性を持って、それを伝えることができないと、どんな席でも認められないんです。
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