寺山:日本では自分の意見を持たない女性のほうが、もてはやされる傾向がありますよね。
岩本:そうですよね。フランスとは、そこが根本的に違う。会話の中のに表れるインテリジェンスやセンスっていうのは若さだけでは太刀打ちできないものだし、経験を重ねることで女っぷりを上げることもできますよね。それは本来、世界共通のはずなんですけどね。ただ、フランスの10代は「あのマダムのように年齢を重ねたい」ってオトナの女性を目標にするんです。日本では確たる理由もなく若いほうがいいといわれるし、10代の女の子が子育てしている40代の女性を見て「あんなふうになりたい」なんて思わないですよね。
寺山:なかなかそういった発想にならないですものね。自分が10代だったときだって、そう考えたこともなかったですし。年上の女性を見て刺激を受けることも、憧れることもなかった。
岩本:江戸時代には素敵なおばあさまがいた、と様々な文献にも残っています。凛とした上品な、日本だっていいものがあったはずなのに……。
寺山:女優も、今では「隣のお姉さん」のようになってしまって、誰でもああいうふうになれると感じさせるキャラクターがトレンド。憧れる女優さんがいても、なんとなく外見とかちょっとした雰囲気は真似できるかも、って範囲は超えていないように思います。
岩本:日本は様々なものの価値観が変わってきているのかもしれません。フランスは今でも大物女優は凛としていて、周りに左右されることもない。でも日本だって以前はそうだったはずです。団塊の世代からいろいろなことが変化していて、例えば子育てのときに軸とする考えなどもあおりを受けている気がします。イタリアだと若いときは綺麗ともてはやされて、マンマになってもあれだけ愛されている。つまり大切なのは姿や目に見える「美」じゃないんですね。愛されるという部分に関していうなら、日本ではおそらく習慣的になんだと思うのですが、あまりにも目に見える若さや美しさに左右されがちで、みんなそれに迎合している。この点に関して、私もなかなか考えを落とし込めきれなくて、すんなりとは納得できていません。もしかしたら、ホントはもっとシンプルで、ボタンの掛け違いみたいなものなのかもしれないけれど……。
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